【LCA実務者必見】原単位データベースの互換性とは?課題から解決策までLCAコンサルタントがわかりやすく解説
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- 2月7日
- 読了時間: 7分
更新日:2月14日
こんにちは。
LCAコンサルタントの小野あかりです。
今回は【原単位データベースの互換性】をテーマに解説していこうと思います。
原単位データベースについては、過去にも何度か記事にしたことがありますので
興味のある方は併せて読んでみてください!
★ LCA原単位の完全ガイド:よくある質問15個をLCAコンサルタントが回答
★ LCAに欠かせない原単位とは?データベースの種類や選び方のコツを専門家がわかりやすく解説 https://www.greenguardian.co.jp/post/intensity 上の2つの記事でも原単位については詳しく解説しているのですが、【互換性】についてまだ解説しておりませんでした。(そもそもLCA原単位ってなに?と思われる方はまず上2つの記事をお読みいただくことをオススメいたします)
目次
1.はじめに
LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施する上で、 原単位データベース は欠かせないツールです。しかし、世界には様々な原単位データベースが存在し、それぞれデータの網羅性や更新頻度、含まれる環境負荷の種類などが異なっています。そのため、異なるデータベースから得られたデータを比較したり、統合したりすることが難しいという課題がありました。
今回の記事では、LCAにおける原単位データベースの選び方、データベース間の互換性向上を推進している GLADイニシアチブ について解説します。
2.なぜ原単位データベースの互換性が重要なのか?
LCAは、製品やサービスの環境負荷をライフサイクル全体で評価する手法です。一般的に原材料の調達から製造、輸送、使用、廃棄またはリサイクルに至るまでの全段階を考慮するため、膨大な量のデータが必要となります。
その際、それぞれの工程で異なるデータベースを活用して環境負荷を算定した場合、結果の整合性が取れなくなり、LCAの精度が低下する可能性があります。
例えば、揮発性有機化合物(VOC)の " 大気への排出 " がもたらす環境影響を評価するとしましょう。
データベースA:煙突からの排出のみを " 大気への排出 "と定義
データベースB:煙突+工場敷地内からの排出を " 大気への排出 "と定義
していた場合、同じ工場のVOC排出量を評価する際に、選択するデータベースによって排出量に差が生じてしまいます。

このような問題を避けるためには、 データベース間でデータの互換性を確保することが重要になります。
3.異なるデータベースで比較してしまうケース
実際、製品の環境負荷あるいは環境影響を比較する際に、それぞれで異なるデータベースを利用しているといったケースは少なくありません。
例えば、ある企業が自社製品と競合製品の環境負荷を比較する際に、自社製品の評価にはecoinventを、競合製品の評価にはIDEAを用いてしまった場合、環境負荷の種類によっては結果に偏りが生じる可能性があります。
また、異なる国の企業が共同でLCAを実施する際に、それぞれの国で異なるデータベースを使用している場合、データの統合が困難になり、LCAの進捗に影響が出る可能性があります。
4.問題を防ぐためには?
このような問題を防ぐためには、以下の点に注意する必要があります。
使用するデータベースを統一する: LCAを実施する前に、関係者間で使用するデータベースを統一しておくことが重要です
データベースの特徴を理解する: それぞれのデータベースの特徴を理解し、課題があると認識した上で適切なデータベースを活用する
GLAD Mapper Toolを活用する: GLAD Mapper Tool を使用することで、異なるデータベース間でデータをマッピングし、互換性を向上させることができます
LCA専門コンサルタントに相談する: データベースの選択やデータの解釈に不安がある場合は、LCA専門コンサルタントに相談する
5.GLADイニシアチブとは?
GLAD (Global LCA Data Access) イニシアチブは、LCAデータのアクセス性と互換性を向上させることを目的とした国際的な取り組みです 。2002年に国連環境計画(UNEP)が主催するライフサイクルイニシアチブのもとに設立されました。
GLADは、異なるデータベース間でデータをマッピングするための手順と基準を開発し、互換性を向上させるためのツールを提供しています。
5.1 GLADが扱うデータベース
GLADが扱っているデータベースは多くありますが、ここでは以下の4つを紹介します。
ecoinvent: スイスのecoinventセンターが開発・管理している、世界で最も広く使用されているLCA原単位データベースの一つ。 欧州各国を対象にしたデータが豊富。産業連関分析に基づいたデータも多く、網羅性が高いのが特徴です
Environmental Footprint: 欧州委員会が開発した、製品や組織の環境フットプリントを計算するための方法論。欧州の政策に準拠したデータが充実しています
IDEA: 日本の産業技術総合研究所が開発した、日本を代表する積み上げ法ベースのLCA原単位データベース。
U.S. Federal LCA Commons: 米国環境保護庁が管理する、米国連邦政府機関向けのLCAデータベース。米国の規制や基準に対応したデータが特徴です。
これらのデータベースは、それぞれ異なる特徴を持っているため、LCAを実施する際には、目的に合わせて適切なデータベースを選択することが重要です。
5.2 GLADデータベースの操作方法
GLADは、異なるデータベース間でデータをマッピングするためのツールとして、 GLAD Mapper Tool を開発しました 。
このツールは、無料で利用でき、異なる命名法システム間でのフローのマッピングを自動化することで、マッピング作業の効率化に貢献しています。
GLAD Mapper Toolは、CAS番号や同義語などを用いて、異なるデータベースのフローをマッチングします。さらに、専門家によるレビューや修正を経て、マッピングの精度を高めています。
6.原単位データベースの選び方
LCAを実施する際には、目的や対象製品、必要なデータの種類などを考慮して、適切な原単位データベースを選択する必要があります。
詳細は解説記事の中でご説明しておりますので、ご興味のある方は、そちらをお読みください!
★ LCAに欠かせない原単位とは?データベースの種類や選び方のコツを専門家がわかりやすく解説 https://www.greenguardian.co.jp/post/intensity
7.LCA専門コンサルタントの役割
LCAは専門性の高い手法であり、原単位データベースの選択やデータの解釈、結果の分析など、多くの知識と経験が必要です。
LCA専門コンサルタントは、LCAに関する専門知識や経験を活かして、以下のようなサポートを提供することができます。
目的に合ったデータベースの選定
データ収集・分析の支援
LCA結果の解釈・評価
環境負荷低減に向けた改善提案

LCAを効果的に活用するためには、LCA専門コンサルタントのサポートを受けることも有効な手段です。
8.まとめ
この記事では、LCAにおける原単位データベースの重要性と、データベース間の互換性の課題、GLADイニシアチブについて解説しました。
LCAを実施する際には、専門家などにも相談をしつつ目的に合ったデータベースを選択することや、GLAD Mapper Toolなどのツールを活用することで、データの互換性を確保し、LCAの精度を高めていくことが重要です。
LCA専門コンサルタントのサポートを受けることで、LCAをより効果的に活用することもできます。
当社は、代表が原単位データベースの開発者でもありますので何かご不明点などありましたらお気軽にお問い合わせくださいませ(初回無料相談実施中です!)。

参考元:
★その他、原単位に関する解説記事
1. LCA原単位の完全ガイド:よくある質問15個をLCAコンサルタントが回答
2. LCAに欠かせない原単位とは?データベースの種類や選び方のコツを専門家がわかりやすく解説 https://www.greenguardian.co.jp/post/intensity
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