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コラム記事

LCA原単位の完全ガイド:よくある質問15個をLCAコンサルタントが回答


原単位に関するQ&A



こんにちは!

LCAコンサルタントの小野あかりです。


ここではLCAを実施する際に必要となるインプットデータおよび原単位の種類や特徴について解説をしました。


今回は、さらに深く原単位の基礎知識の部分を知っていただけたらと思い、原単位を学んでいる方から良く出てくる質問を15問用意しました。

こちらに回答する形で、原単位について解説をしていけたらと思います!

回答者は、LCAの基盤研究(ウォーターフットプリントインベントリデータベース(水の原単位)の開発)で博士を取得した当社代表の小野雄也です。


この記事を通して、より原単位についての知識をつけていただけたらと思いますので、最後まで是非お読みください。

それでは早速始めていきます!



Q&A一覧


Q1.原単位って何ですか?簡単に説明してください。

原単位とは、一言でいえば、係数のことです。

LCAでは単位当たりの環境負荷量を表す係数(原単位)がデータベースに搭載されており、原単位を活用することで簡単に環境負荷が算定できます。

例)鉄 1kgを製造するのに発生するCO2の量 など


このように便利な原単位ですが、何が含まれていて、どんな作られ方をしているのか?

当てはめようとしているものと一致するのかはきちんと中身を確認する必要があります。


Q2.なぜLCAで原単位が重要なのですか?

LCAでは、製品のライフサイクル全体(原料調達、製造、輸送、使用、廃棄など)における環境負荷を評価しますが、その際に原単位データが不可欠となります。これは、一つ一つ自分で調査して算定することが困難だからです。信頼できる原単位を用いることで、各プロセスの環境影響を定量的にかつ簡易に把握でき、製品の改善点を見出すことができます。つまり、原単位はLCAの土台となる重要な情報なのです。


Q3.原単位のデータはどこで入手できますか?

原単位のデータは、LCAデータベースや業界団体、大学・研究機関などが公開しているものが一般的です(データベースと呼ばれています)。

代表的なものにはecoinventIDEA, 3EIDなどがあります。

これらのデータベースから、製品や地域に応じた原単位を検索・利用することができます。

ecoinventは、SimaProというソフトウェアを購入することで入手する方法もあります。

IDEAは産業技術総合研究所が開発した日本のLCAデータベースです。委託を受けた一般社団法人サステナブル経営推進機構などの組織でから購入できます。3EIDは国立環境研究所がHP上に無料で公開しています。


Q4.原単位の単位は何ですか?例えば?

原単位は、対象となる製品やプロセスの単位量あたりの環境負荷を表します。

環境負荷は様々なものがあり、LCAでは評価対象物質ともいわれます。

代表的なものとしては

  • CO2排出量:kg-CO2/kg(製品1kgあたりのCO2排出量)

  • エネルギー消費量:MJ/kg(製品1kgあたりのエネルギー消費量)

  • 水使用量:m3/個(製品1個あたりの水使用量)

  • 土地改変面積:m2/円(金額あたりの土地改変面積)

などが挙げられます。


Q5.原単位を使うときの注意点はありますか?

  • データの出典と年代を確認し、最新かつ信頼性の高いものを使用する

  • 地域性を考慮し、対象地域に適した原単位を選択する

  • 製造プロセスや技術の違いを認識し、適切な原単位を選ぶ

  • 原単位の適用範囲(システム境界)を理解し、重複や漏れがないようにする

  • 不確実性を認識し、必要に応じて感度分析を行う

  • 同一製品でも原単位が異なる場合があるので、類似製品の比較など慎重に行う


Q6.原単位のデータの信頼性はどのようにして確認できますか?

原単位のデータの信頼性を確認するためには、原単位のデータ出典を見ることが大切です。信頼できる公的機関やLCAデータベースなどから取得したデータであるかどうかを確認しましょう。

一般的に、ecoinventやIDEAなどの公的なデータベースが信頼性が高いといえますが、一部の原単位は、参照している統計の廃刊やデータの更新がストップしたことにより、古い技術体系をそのまま使わざるおえないものもありますので注意が必要です。


Q7.自分で原単位を作ることはできますか?

はい、自分で原単位を作ることは可能です。

ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 詳細なデータ収集と分析が必要で、時間と労力がかかる

  • 計算方法や境界設定の妥当性を確保する必要がある

  • 計算結果の検証と不確実性の評価が重要

  • 既存の原単位データベースを参照し、妥当性を確認することが推奨される

原単位を作る際には高い知識が必要となり、労力もかかってくるため、ほとんどの企業は、公開されているデータベースなどを活用しています。


Q8.原単位が見つからない場合はどうすればいいですか?

原単位が見つからない場合は以下のような対処法を取ります。

  • 自社でデータを収集し、独自原単位を作成する

  • 類似の製品やプロセスの原単位で代用する

  • 複数の関連する原単位を組み合わせて推計する

  • 専門家や業界団体に問い合わせる


Q9.原単位の精度はどのくらいですか?

原単位の精度は、データソースや計算方法によって大きく異なります。

一般的に、以下のような要因が精度に影響します。

  • データの収集方法と範囲

  • 地域性や時間的変動

  • 製造プロセスの違い

  • データの更新頻度

多くの場合、原単位は±10〜30%程度の不確実性を持つと考えられていますが、個々の原単位によって精度は異なります。このため、原単位を使う際は、その精度を考慮に入れて、適切な解釈と活用が求められます。さらに重要な意思決定に使用する場合は、不確実性分析や感度分析を行うことが推奨されます。


Q10.海外の原単位を日本で使っても大丈夫ですか?

基本的には、国や地域によって製造プロセスや電力構成などが異なるため、海外の原単位をそのまま日本で使うのは適切ではありません。ただし、類似した製品や技術の場合は、参考程度に使うことは可能です。その際は、地域差による誤差を考慮し、慎重に検討する必要があります。


Q11.原単位の更新頻度はどのくらいですか?

原単位の更新頻度は、データベースや提供元によって異なります。

一般的には以下のような更新頻度になっていることが多いです。

  • 公的機関のデータベース:5年程度に大規模な更新

  • 商用ソフトウェアのデータベース:1年ごとに更新

  • 業界団体のデータ:不定期(技術革新や規制変更に応じて)

更新頻度が高いデータベースについては、ISOの影響や業界からの要請が反映されて使い勝手が良くなるケースも近年では増えています。

ただし、毎年更新するデータベースであっても電力などのユーティリティ関連を更新するといった比較的小規模な変化で終わることも多く、原単位の中身が全て劇的に刷新されるということはほとんどありません。


Q12.同じ製品でも原単位が異なることがあります。なぜですか?

同じ製品でも原単位が異なる主な理由として以下の要因が挙げられます。

  • 製造プロセスや技術の違い

  • 地域による違い(エネルギー源、原材料調達など)

  • データの収集年や方法の違い

  • システム境界の設定の違い

  • 配分方法の違い(副産物の扱いなど)

これらの要因により、同じ製品でも複数の原単位が存在することがあります。

例えば、同じ鋼材製品でも、電炉法と高炉法では製造プロセスが異なるため、CO2排出量が大きく異なります。

条件の違いが、そのまま原単位の違いにも反映されますので、使用する際は、各原単位の前提条件や適用範囲を十分に確認することが重要です。


Q13.原単位の値が大きいほど環境負荷が高いということですか?

一般的に、同じ単位で表された原単位の値が大きいほど、その項目の環境負荷が高いと言えます。例えば、CO2排出原単位が5kg-CO2/個の製品は、2kg-CO2/個の製品よりも、製造時のCO2排出量が大きいということになります。したがって、原単位を比較することで、製品間の環境性能を定量的に評価することができます。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 異なる環境影響カテゴリー間の直接比較はできない

  • 製品やプロセスの機能単位を考慮する必要がある

  • 原単位の適用範囲や前提条件を確認する必要がある


Q14.原単位は過去のデータなのに、新しい製品の評価に適用して良いのでしょうか?

原単位は過去のデータに基づいているため、最新の製品に適用する際には注意が必要です。製品の環境性能は、技術進歩やライフスタイルの変化などにより、時代とともに変化していくものです。

一般的に、原単位データは数年に一度程度更新されています。なぜなら、製造プロセスの効率化、再生可能エネルギーの導入拡大、新素材の開発など、製品の環境性能は徐々に改善されていくからです。

したがって、LCAを行う際は、できるだけ最新の原単位データを使用することが重要です。過去のデータを使い続けると、製品の実際の環境影響を正確に評価できない可能性があります。


Q15.原単位を使って製品改善につなげるにはどうすればいいですか?

原単位を活用して製品の改善につなげるには、以下のようなステップが考えられます。

  1. 現状の把握: まず、製品の各部分や製造プロセスに関連する原単位を使って、現在の環境負荷を計算します。これにより、製品のライフサイクル全体での環境影響の全体像が見えてきます。

  2. ホットスポットの特定: 計算結果を分析し、環境負荷が特に大きい部分(ホットスポット)を見つけます。例えば、特定の材料や製造工程が全体の環境負荷の大部分を占めているかもしれません。

  3. 改善案の検討: ホットスポットに焦点を当て、環境負荷を減らすための方法を考えます。例えば:

  • 材料の変更

  • 製造プロセスの効率化

  • リサイクル材の使用

  1. シミュレーション: 考えた改善案について、新しい原単位を適用して環境負荷を再計算します。これにより、改善案の効果を数値で確認できます。

  2. トレードオフの検討: ある部分の環境負荷を減らすことで、別の部分の負荷が増えることもあります。原単位を使って、このようなトレードオフを定量的に評価します。

  3. 結果の可視化: 原単位を使った計算結果をグラフや図で表現することで、社内の他部門や経営陣に改善の必要性や効果を分かりやすく説明できます。

原単位を活用することで、製品の環境負荷を定量的に評価し、効果的な改善策を見出すことができます。

ただし、原単位はあくまで平均的な値であることを念頭に置き、必要に応じて実測データと組み合わせたり、専門家の意見を聞いたりすることで、より確実な製品改善につなげることができます。



以上、原単位に関するQ&Aでした!

いかがでしたでしょうか?

少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。


原単位やインプットデータ、LCA評価全般に関するご質問なども受け付けておりますのでお気軽にご連絡ください!

※初回無料相談(1時間)も実施しております。


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