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Scope3算定でデータが集まらない?SSBJ対応に向けた“確からしさ”を上げるための4つの実践アプローチ

  • 執筆者の写真: o a.
    o a.
  • 6月6日
  • 読了時間: 6分

更新日:6月20日

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです!


今日は、"Scope3算定におけるデータ収集の課題"をテーマにしてみました。


「Scope3の算定を進めたいのに、サプライヤーがデータを出してくれない」

「正確な数字が揃わないまま、開示時期が迫ってきた」

──そんな声を、多くの現場から耳にします。


特に、SSBJによる開示義務化が迫るなか、「段階的に進めればいい」といった悠長な話では済まされないのが、いまのScope3実務者のリアルです。


Green GuardianではこれまでもScope3に関する記事はいくつか書いてきましたが、"一次データの重要性"や"バリューチェーンを巻き込むことの重要性"などにフォーカスしたものが多かったと思います。

勿論、これらの要素はとても大事です。

しかし、実際にScope3算定を進めていこうとすると、中々思うようにいかないことも多々あります。


本記事では、こうした実務の現場で本当に役立つ「確からしさを高めるための具体的アプローチ」を、ご紹介します。



目次

1.そもそも、Scope3で完璧な一次データを集めるのは“幻想”

2.今すぐできる!確からしさを高める4つの実務アプローチ

3.回答が得られない、あるいは数値が怪しいときはどうする?

4.まとめ:Scope3の“確からしさ”は、作るもの



1.そもそも、Scope3で完璧な一次データを集めるのは“幻想”

Scope3は「他者の活動に伴う排出」です。サプライヤーや物流業者など、自社の直接管理外にあるため、すべてを正確に完璧に把握するのは困難です。

そのため、実務者に求められるのは「精度100%」ではなく、「合理性と説明責任のある算定」になってくるかと思います。


SSBJも、合理的な見積もりと方法論の明示を重視しており、「限界と改善方針を示せばOK」というスタンスです。



  2.今すぐできる!確からしさを高める4つの実務アプローチ

(ⅰ) 代表値の“根拠パッチ”で、説得力をもたせる

代表値を使う場合は、その選定に明確なロジックを持たせることが重要です。

  • 「材質(鉄)」「国(中国)」「製法(鋳造)」などの属性をキーに3EIDやIDEAで代表値を選定

  • 「未回答○件については、このルールで補完した」といった記録を残す


これにより、“とりあえず代表値を入れた”という印象を与えずに済みます。



(ⅱ) 疑似一次データの活用:調達実績×公的単位原単位

調達品目の実績値(重量や数量)に対して、公的LCAデータベースの原単位を掛け算することで、一次に近い精度のデータを再現。

  • 「金額」ではなく「物量ベース」での算定に切り替える

  • エネルギーや素材ごとに異なる原単位をマトリクス化して使用



(ⅲ) 異常値の見抜き方:3つの軸でベンチマーク

嘘や間違いを見抜くためには、単に信じるのではなく“比較”する視点が必要です。

チェック方法

同業他社

LCAデータベースなどを参照

過年度比

前年比で大きくズレていないか

類似品比較

類似の製品・部品との排出量を比率で確認

数値に違和感がある場合は、「再見積依頼」ではなく「ロジックでの修正」で対処するのが現実的です。



(ⅳ) 三層レイヤーでScope3の“全体構造”を設計する

Scope3全体を以下の3レイヤー(タイプ)で捉えると、説明しやすくなります。

レイヤー

内容

対応

Layer 1

一次データ(回答あり)

そのまま使用、根拠と単位を記録

Layer 2

疑似一次データ

実績×公的原単位の組み合わせで推定

Layer 3

代表値または金額ベース

根拠を明示しつつ補完

全てをLayer 1にする必要はなく、Layer 2や3を“根拠ある形”で組み込むことが信頼性につながります。



  3.回答が得られない、あるいは数値が怪しいときはどうする?


(ⅰ) 「データ出し渋り」への対処術

  • 「CO2ではなくエネルギー使用量だけでOK」など、ハードルを下げて再依頼(あくまで一部補完情報として活用し、不足カテゴリについては代表値や他手法でロジックをもって算定する必要があります)

  • 「これはSSBJ開示義務対応です」と説明し、社内の重要度を伝える(対応しない場合、Scope3開示が不完全となり、SSBJの情報開示基準に抵触する可能性があるため、大本の企業は信頼性や評価に影響を受けるリスクがあります。一方で、データ提供を渋っている側の企業には直接的な罰則やペナルティが存在しないため、倫理的な協力姿勢を求めるしかないのが現実です)

  • 「ご対応が難しければ代表値で補完しますが、できれば実態を反映させたい」と提示(ただし、そもそも活動量データが提供されない場合は、代表値の適用も困難になるため、最低限の活動量(重量・数量・使用頻度など)を取得することが算定成立の前提になります)



(ⅱ) 「上がってきたデータ」が怪しいときの見抜き方

  • 「鉄部品で1kgあたり0.3kg-CO2eq」など、明らかに小さい数値は業界平均と照合(とはいえ、数値感覚があまり無い中で数値データの大小を適切に解釈するには専門知識が求められるため、外部コンサルやLCA専門機関の支援を受けないと判断が難しいのが現実です)

  • 「電力未使用」など、工程上不自然な情報は確認依頼

  • 公開されているCSRレポートや統合報告書と突合して整合性を判断(ただし、この作業には相応の調査負荷と判断力が求められるため、実際にここまで対応できる企業は限られるのが現状です。内部資源の制約がある場合には、優先度の高い取引先に絞る、または専門支援を受けるなどの現実的な線引きが必要です)



(ⅲ) 公開情報を使った“仮見積もり”はSSBJでもOK

IFRS S2(SSBJのベース)では、一次データが得られない場合に「公開情報などを用いた合理的な見積り」は正式に認められています

  • 出典を明記し、「制約がある推定である」ことを注記すれば問題なし

  • 統合報告書などに記載されたエネルギー使用量からの逆算も有効



  4.まとめ:Scope3の“確からしさ”は、作るもの

正直に言えば、Scope3の算定精度に完璧はありません。

しかし、「どの情報が揃っていて、どこが補完なのか」「どうやってその数値を作ったのか」をしっかり示せれば、SSBJに対しても外部ステークホルダーに対しても、説明責任を果たせます。

Scope3は“完璧な答え”ではなく、“納得できるプロセス”を示すことが評価されるフェーズに入っています。

開示義務をチャンスに変えるために──。現場で積み重ねられた知恵を、今こそ武器にしていきましょう。


私たち株式会社Green Guardianでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにしたScope3算定サポートや、現場目線でのコンサルティングを通じて、脱炭素やサステナビリティ対応をお手伝いしています。

「何から手をつけたらいいか分からない」という方も大歓迎です。

気軽に話せる【LCAまわりの“コンサル”】として、お困りごとを一緒に整理するところから伴走します。

ご相談はいつでもお気軽にどうぞ!


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