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「Global Risks Report 2025」から読み解く—分断が進む世界と深刻化するリスク

  • 執筆者の写真: o a.
    o a.
  • 3月17日
  • 読了時間: 8分

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです。

前回、『「サステナビリティ後退?」— 2025年、企業の覚悟が試される』と題したコラム記事を投稿しました。

そこでは、世界経済フォーラム(WEF)が2025年1月に出した『The Global Risks Report 2025』を基に考察を展開していきましたが、あまり内容には触れませんでした。

なので今回は、『The Global Risks Report 2025』そのものについて解説していきたいと思います。

少し長くなりますが、よければ最後までお付き合いください。



目次



1.はじめに

WEFは、毎年恒例の『The Global Risks Report 』の2025年版を発表しました。 

今年は記念すべき20回目の発行となり、長年にわたり世界のリスク分析において重要な役割を果たしてきた報告書です。

世界中の専門家の意見をまとめ、 今後10年間の世界に影響を与える可能性のあるリスクを分析したもので、 ◆ 国際情勢 ◆ 環境問題 ◆ 社会問題 ◆ 技術革新 など、様々な分野におけるリスクを網羅的に評価しています。 

本記事では、同報告書の概要を紹介し、特に重要なポイントを解説していきます。


報告書全体を貫くテーマは、世界秩序のパラダイムシフトです。

報告書では、高まる不安定さ、分極化する言説、信頼の低下 、そして安全保障の不安定化といった特徴を持つ、より不安定な世界秩序への移行が進んでいると指摘しています。



  2.The Global Risks Reportの全体像

『The Global Risks Report 2025』は、世界がますます分断されつつあると警鐘を鳴らしています。 

地政学的な緊張の高まり、環境問題の深刻化、社会の分極化、技術革新の加速など、様々な課題が複雑に絡み合い、世界の安定と進歩を脅かしています。 

報告書では、900名を超える専門家の知見を集約したグローバルリスク認知調査(GRPS)の結果を基に、 これらのリスクを短期(2年以内)中期(2~10年)長期(10年)の3つの期間に分けて分析し、政策決定者が喫緊の危機と長期的な課題のバランスを取るための指針を提供しています。


主要なリスクカテゴリーとしては、地政学環境社会技術の4つが挙げられます。 

重要なのは、これらのリスクは相互に関連し合い、複雑な影響を及ぼし合っているという点です。 

例えば、気候変動は異常気象の増加や資源不足を引き起こし、それが社会不安や紛争のリスクを高める可能性があります。

また、技術革新は経済成長や生活の向上に貢献する一方で、格差の拡大や雇用の喪失、サイバーセキュリティのリスクなど、新たな課題を生み出す可能性も孕んでいます。


過去のレポートと比較すると、環境問題への懸念が年々高まっていることが分かります。 

特に、気候変動による異常気象は、短期的なリスクとしても、長期的なリスクとしても、最も深刻な脅威として認識されています。 

また、地政学的なリスクも高まっており、ウクライナ、中東、スーダンにおける紛争などが、世界経済や社会に大きな影響を与える可能性が指摘されています。 

国家間紛争やテロリズム、サイバー攻撃など、様々なリスクが顕在化しています。


報告書では、短期、長期における主要なリスクを以下のように示しています。


表1:短期(2年以内)における上位5つのグローバルリスク

順位

リスク

説明

1

誤情報・偽情報

悪意のある情報操作やフェイクニュースの拡散

2

異常気象

気候変動による洪水、干ばつ、熱波などの増加

3

国家間武力紛争

国家間の軍事衝突やテロリズム

4

社会の分極化

政治、イデオロギー、経済状況などをめぐる対立の激化

5

サイバースパイ活動とサイバー戦争

国家や犯罪組織によるサイバー攻撃


表2:長期(10年)における上位5つのグローバルリスク

順位

リスク

説明

1

異常気象

気候変動による洪水、干ばつ、熱波などの増加

2

生物多様性の喪失と生態系の崩壊

生物の絶滅や生態系の破壊

3

地球システムの重大な変化

気候変動による地球規模の環境変化

4

天然資源の不足

水、食料、エネルギーなどの資源不足

5

誤情報・偽情報

悪意のある情報操作やフェイクニュースの拡散

加えて、報告書では、火山噴火などの気象関連以外の自然災害、パンデミック、組織犯罪といった、あまり注目されていないものの、大きな影響を与える可能性のあるリスクについても言及しています。 

これらのリスクは、短期的な視点だけでなく、長期的な視点からも注視していく必要があります。 



  3.報告書が警告する環境リスク

環境問題は、『The Global Risks Report 2025』において中心的なテーマとなっています。

 2024年は記録的な猛暑に見舞われ、深刻な異常気象が世界各地で発生しました。

こうした状況を反映し、気候変動に関連するリスクは、世界の安定を脅かす最大の要因として認識されています。   


異常気象は、短期的なリスクとしても、長期的なリスクとしても、最も深刻な脅威として認識されています。

洪水、干ばつ、熱波などの異常気象は、人々の生命や財産に大きな被害をもたらし、経済活動や社会インフラにも深刻な影響を及ぼします。   


また、生物多様性の喪失と生態系の崩壊も、長期的なリスクとして大きな懸念材料となっています。 

生物の絶滅や生態系の破壊は、地球全体のバランスを崩し、食料生産や水資源の確保、気候変動の抑制など、様々な面で悪影響を及ぼします。   


興味深いことに、環境リスクに対する認識には世代間格差が見られます。 若い世代は、上の世代よりも環境問題に対して強い危機感を抱いており、長期的なリスクとしてより深刻に捉えています。



  4.報告書が警告するテクノロジーリスク

人工知能(AI)の急速な発展は、社会に大きな変化をもたらしています。

AIは、様々な分野でイノベーションを促進し、私たちの生活をより便利で豊かにする可能性を秘めています。しかし、同時に、AIは新たなリスクも生み出しています。   


誤情報や偽情報の拡散は、AI技術の悪用によって深刻化しています。 

AIは、本物と見分けがつかないような偽の画像や動画、音声などを生成することができ、悪意のある者がこれらを利用して世論を操作したり、社会不安を引き起こしたりする可能性があります。   


また、AIは雇用にも影響を与えます。 AIによる自動化は、一部の仕事が人間から機械に置き換わることを意味し、雇用の喪失や格差の拡大につながる可能性があります。   


一方で、AIはグローバルリスクに対処するための有効なツールとしても期待されています。 例えば、気候変動の予測や災害対策、医療分野など、AIは複雑な問題を解決するための強力な手段となりえます。   


AIのリスクと機会を適切に理解し、その発展をコントロールしていくことが、今後の社会にとって重要な課題となります。



  5.報告書が警告する経済リスク

世界経済は、2024年に低成長を記録しましたが、経済リスクは前年に比べて低下しています。 インフレは落ち着きを見せ、景気後退の懸念も薄れています。

しかし、油断は禁物です。世界的に関税引き上げなどの貿易制限措置が続けば、経済に深刻な影響を与える可能性があります。 

また、一部の資産クラスではバリュエーションが高止まりしており、様々なリスクに対して脆弱な状態にあります。



  6.報告書が最も伝えたいメッセージ

「グローバルリスク報告書2025」は、以下の3つの重要なメッセージを伝えています。   


  • 社会の結束力の低下:  格差の拡大、政治的な分極化、情報操作などにより、社会の結束力が弱まっている。

  • 生活費の増加: インフレやエネルギー価格の高騰などにより、世界中で生活費が増加し、人々の生活を圧迫している。

  • 武力紛争の増加:  地域紛争やテロリズムなど、武力紛争が増加し、人々の安全を脅かしている。


報告書は、これらの課題に対処するために、国際協調と多様なステークホルダーによる連携の重要性を強調しています。 

特に、環境問題については、各国政府、企業、市民社会が協力し、持続可能な社会を実現するための取り組みを加速させる必要があると訴えています。



  7.おわりに

世界経済フォーラムの『The Global Risks Report 2025』は、世界が直面する様々なリスクを浮き彫りにし、国際協調と多様なステークホルダーによる連携の重要性を訴えています。 特に、環境問題については、喫緊の課題として、早急な対策が必要とされています。   


報告書の主要なメッセージは、グローバルリスクの相互接続性と複雑性の増大です。

 私たちは、もはや単独でリスクに対処することはできません。各国政府、企業、市民社会が協力し、共通の課題解決に向けて取り組む必要があります。   


短期的なショックに直面しながらも、長期的な課題にも目を向け、レジリエンス(回復力)を構築していくことが重要です。 事前にリスクを予測し、対応策を準備することで、将来の危機に備えることができます。   


前回のコラム記事でも触れましたが、トランプ政権の再登板により、環境規制の緩和や脱炭素政策の後退が予想される中、一部の企業がサステナビリティへの取り組みを縮小する動きを見せています。

「サステナビリティは後退している」「サステナビリティへの機運は弱まっている」と報道する機関・ニュースサイトもありますが、『The Global Risks Report 2025』の内容を見て分かる通り、「サステナビリティの機運が弱まった」ということは全くなく、外的要因によって、「短期的な混乱で優先順位が揺らいでいるだけ」の状態であると言えます。


もちろん気候変動以外にも取り組むべき課題はたくさんありますし、何かチャレンジをした場合にその行動が、他のリスクにどのような影響を及ぼすのか、よく考えて行動する必要があります。

問題が複雑に絡み合っている分、行動に移すことは簡単ではないかもしれませんが、優先すべきリスクを把握したうえで適切な行動を取っていく事が望まれます。


世界経済フォーラム『The Global Risks Report 2025』全文はこちらからご覧いただけます。[https://www.weforum.org/reports/global-risks-report-2025]



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