top of page
LCA・環境なら株式会社Green Guardian

コラム・お役立ち情報

「サステナビリティ後退?」— 2025年、企業の覚悟が試される

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです。


2025年1月、世界経済フォーラム(WEF)の『Global Risks Report 2025』が発表されました。

この報告書は、気候変動や地政学的リスク、経済の不確実性など、世界が直面する重大なリスクを分析し、今後の展望を示すものです。

ここ最近、一部では「サステナビリティは後退している」「サステナビリティへの機運が弱まっている」との声も聞かれます。特にトランプ政権の政策転換を受け、企業の姿勢に変化が見られることも指摘されています。

しかし、本当にサステナビリティは後退しているのでしょうか?また、仮にそうだとしても、取り組みをやめてしまって良いのでしょうか?


本稿では、WEFの『Global Risks Report 2025』を基に、

◆ 『Global Risks Report 2025』の全体概要

◆ 機運が下がったと言われているが、だからといって取り組みを辞めてはいけない理由

◆ そもそも、本当にサステナビリティ関連の機運は弱まっているのか

◆ 『Global Risks Report 2025』が最も伝えたいこと

について、考察していきます。ぜひ最後までお付き合いください。


目次



1.  『Global Risks Report 2025』の全体概要

WEFの『Global Risks Report 2025』は、世界が直面する主要なリスクを短期・長期の視点から分析し、各国の意思決定者や企業が適切な戦略を立てられるよう示唆を提供するものです。

報告書では、2025年におけるリスクとして以下の点が特に強調されています。


  • 異常気象 過去10年間で頻度・深刻度が増しており、2025年のリスクランキングでも2番目に高い位置を占める。

  • 生物多様性の喪失と生態系の崩壊 長期的に見てもトップクラスのリスクとなっており、気候変動と相まって社会や経済に多大な影響を与える。

  • 地政学的不安 各国の分断が進む中、気候変動対策の国際協調が難しくなり持続可能な取り組みにおける姿勢が各国でばらつきを見せている。

  • 経済の不安定性 エネルギー市場の変動やサプライチェーンの問題により、環境政策の安定的な実行が困難になるリスクが指摘されている。


これらのデータは、サステナビリティの問題が一時的な関心ではなく、今後も世界的な優先課題であり続けることを示しています。

※『Global Risks Report 2025』については、より詳細な紹介コラムを別途作成予定です。



2. トランプ政権でサステナビリティ後退? それでも続けるべき理由

トランプ政権の再登板により、環境規制の緩和や脱炭素政策の後退が予想される中、一部の企業がサステナビリティへの取り組みを縮小する動きを見せています。

しかし、これを理由に完全に撤退するのは、経営の長期的な安定性を損なうリスクがあります。


なぜなら、環境政策が緩和されたからといって、

  • 気候変動によるリスクが減るわけではない

  • 消費者の意識や市場の流れは変わらない

  • 投資家のESG(環境・社会・ガバナンス)評価は引き続き重要


こうした要因を考慮すれば、短期的な政策の変化に合わせてサステナビリティ戦略を縮小することは、むしろ将来の企業価値を損なう可能性があります。

特に近年、サステナビリティを推進することでブランド価値を高め、市場で競争優位性を確立した企業が多くあります。

それにもかかわらず、『政治の風向きが変わった』という理由で方向転換する企業が見受けられるのは、いささか残念に思います。

サステナビリティが重要であると主張し、利益を上げてきた企業であればなおさら、持続可能な未来への責任を果たすべきではないでしょうか。


また、短期的な利益を優先して環境対応を怠ることは、将来的なコスト増や規制強化の影響をより強く受けることを意味します。

例えば、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)のような貿易規制が強化される中、持続可能性の低い企業は競争力を失い、結果的に損失を被る可能性が高くなります。



3. そもそも、本当にサステナビリティの機運は弱まっているのか

一部では「サステナビリティの熱が冷めた」との見方もありますが、 『Global Risks Report 2025』のデータを見ると、むしろその重要性は高まっていると言えます。


たとえば、

  • 短期的なリスクとして「異常気象」が2番目に挙げられた

  • 長期的な視点では「生態系崩壊」が2位となり、環境リスクが依然として最上位に位置している

  • 900人以上の専門家の意見でも「環境リスクの深刻度は増す」との見解が大多数を占める


このようなデータを見る限り、「サステナビリティの機運が弱まった」というより、「短期的な混乱で優先順位が揺らいでいる」というのが実態でしょう。



4. 『Global Risks Report 2025』が最も伝えたいこと

WEFの『Global Risks Report 2025』が最も強調しているのは、「短期的なリスクに流されることなく、長期的な視点を持つことの重要性」です。


特に、以下3点に絞られます。

  • サステナビリティは長期的な経済安定の基盤である

  • 一時的な政策変更や市場の波に流されず、企業は戦略的に取り組むべきである

  • 環境問題への対応は、単なる規制遵守ではなく、競争優位性の源泉となる


また、「短期的な視点に囚われることが最大のリスクになりうる」との指摘もあります。仮に、企業が「政治の変化があったから」といって方針を急に変えれば、それこそ長期的な信頼を損なうリスクがあるのです。



5.おわりに

2025年、サステナビリティの機運は決して消えていません。むしろ、その必要性はより強まっています。

LCA(ライフサイクルアセスメント)という概念がまだ広く知られていなかった時代から、私たちは地道に環境影響の可視化に取り組んできました。当時は「環境対策はコスト」と見なされ、持続可能性を真剣に考える企業は一握りでした。しかし、ここ数年で状況は大きく変わり、企業はこぞってサステナビリティに取り組むようになりました。環境配慮が企業価値を高め、投資家の信頼を得る要素となることが明らかになり、持続可能な製品やサービスへの需要が拡大してきたのです。

だからこそ、短期的な政治や経済の変化によって企業の姿勢が揺らぐことには、強い違和感を覚えます。「環境が大事」「サステナビリティは企業価値につながる」と言ってきたその覚悟はどこへ行ってしまったのでしょうか?

今、私たちは岐路に立っています。過去の取り組みを無駄にせず、環境問題が現実のリスクとして迫る中で、いかにサステナビリティを維持し、発展させていくか。それは企業にとっての「選択」ではなく、持続的な成長のために不可欠な「責務」です。時代の変化にどう向き合うのか— —企業の姿勢が、今まさに試されているのです。


社員のプロフィール写真

参考文献:

 

★ 小野雄也の経歴はコチラをクリック


★ お問い合わせはコチラをクリック



Comentarios


​メールマガジンのご案内

株式会社GreenGuardianでは、ご登録いただいた方にメールマガジンの配信サービスを行っています。
LCA関連の基礎知識、サステナビリティに関わる日本や海外の動向、基準や規制を含めた、

さまざまな情報をメールマガジン形式でお届けします。是非ご登録ください。

登録無料・不定期配信

登録が完了いたしました

AdobeStock_241865141.jpeg

LCA・地域社会活性化・社会価値の見える化なら

プロフェッショナルな担当が御社のお悩みを解決します

お客様の課題解決をサポートします。
お気軽にご相談ください。

bottom of page