top of page
LCA・環境なら株式会社Green Guardian

コラム・お役立ち情報

配分方法でCO2排出量は変わる?LCAコンサルタントがやさしく解説

13 時間前
読了時間: 12分

こんにちは!

LCAコンサルタントの小野あかりです。

今回は、LCAで結果を大きく左右する「配分(アロケーション)」について、基本から順を追って見ていきます。


「同じ工場で、同じだけCO2を出しているのに、計算方法を変えたら製品のCO2排出量が3倍になった」。

そんなことが、LCAでは実際に起こります。

その大きな要因の1つが「配分(アロケーション)」です。


では、なぜ同じ工程でも計算方法によって結果が変わるのでしょうか。

1つの工程から複数の製品が生まれるとき、その工程のCO2排出量を製品ごとにどう分けるか。

この「分け方」の選択によって、製品1つあたりの数字は大きく変わります。

化学製品や繊維、物流など、複数の製品やサービスを同時に生み出す業種では、特に結果を左右するポイントです。


そこでこの記事では、配分の基本的な考え方から、国際規格が定める手順、数値例による比較、業界別の具体的な場面、実務で迷ったときのチェックポイントまで、順を追って解説します。



目次



1. 配分とは?なぜ必要なのか


1つの工程から、複数の製品が生まれる

製品のライフサイクルをたどっていくと、1つの工程から複数の製品が同時に生まれる場面がよくあります。


たとえば、身近な例が牛です。

牛からは牛肉だけでなく、牛乳や皮革も得られます。牛を育てるための飼料や、牛から出るメタンの環境負荷は、牛肉・牛乳・皮革のどれに、どれだけ割り当てるべきでしょうか。

こうした、共通の工程の環境負荷を、そこから生まれる複数の製品に割り振ることを、LCAでは「配分」と呼びます。

図1

主製品・副産物・連産品

まず、配分を考えるうえで、よく使われる用語を整理しておきます。


•      主製品:その工程の主な目的となる製品

•      副産物:主製品と一緒に生まれ、他の用途に利用されるもの(主製品より経済価値が小さいことも多い)

•      連産品:同じ工程から同時に生まれ、どれが主でどれが従とはいいにくい複数の製品

LCAでは、経済価値が小さくても他の用途に利用されるものは「副産物」として配分の対象になる一方、処分される「廃棄物」には通常、負荷を配分しません。


配分をしないと何が起こるか

では、配分をしないと何が起こるのでしょうか。

仮に配分をせず、工程全体の負荷をすべて主製品に負わせると、主製品の排出量は過大になり、副産物は「環境負荷ゼロ」で手に入ることになってしまいます。

その結果、副産物を原料として使う企業は、実態よりかなり小さい数字で計算してしまうおそれがあります。

このような偏りを防ぎ、それぞれの製品が担うべき負荷を公平に見積もるために行うのが、配分です。



  2. ISO 14044が定める3つのステップ

配分の方法は、LCAの国際規格であるISO 14044に定められています。

ここで押さえておきたいポイントは、方法の「優先順位」が決まっていることです。

図2

ステップ1:できる限り配分を避ける

まず検討すべきなのは、「そもそも配分しなくて済む方法はないか」です。

ISO 14044は、次の2つの方法を挙げています。


① 細分化

工程をさらに細かく分け、製品ごとのデータを取る方法です。たとえば「工場全体」で一括りにしていた工程を、「製品Aのライン」「製品Bのライン」に分けて電力量を計測できれば、配分は必要なくなります。


② システム拡張

副産物が果たす機能まで含めて、評価の範囲を広げる方法です。

たとえば、副産物として生まれた熱が近隣で使われるなら、「製品を作る+熱を供給する」という2つの機能をもつシステムとして評価します。

なお、規格の注記では、このステップ1は正式には配分手順の一部ではないとされています。

「配分の前に、まず配分を避ける努力をする」という位置づけだと理解するとよいでしょう。


ステップ2:物理的な関係で分ける

配分が避けられない場合は、製品と負荷の間にある物理的な関係にもとづいて分けます。

ここでいう物理的な関係とは、製品の生産量を変えたときに、投入や排出がどう変わるかという因果関係のことです。

こうした関係をそのまま捉えるのは難しいことも多いため、実務では質量(重さの比率で分ける)や熱量(製品がもつエネルギー量、つまり発熱量にもとづく比率で分ける)が、その近似として使われる場面が多くあります。


ステップ3:経済価値など、その他の関係で分ける

物理的な関係だけでは分けられない場合は、それ以外の関係を使います。

代表的なのが、製品の経済的価値(価格)の比率で分ける方法です。


同じ考え方は、GHGプロトコルにも

製品のカーボンフットプリント(CFP)の国際的な算定基準の1つであるGHGプロトコルの製品基準も、第9章「Allocation(配分)」で配分について定めています。

配分を避ける方法として、プロセスの細分化とシステム拡張に加え、「機能単位の再定義」も挙げているのが特徴です。


ISO 14044とGHGプロトコルでは、配分を避けられる場合はまず配分を避け、そのうえで物理的・経済的な関係などを用いて配分するという考え方が共通しています。



  3. 数値例で見る:方法によって結果はこれだけ変わる

ここまでの考え方を、仮の数値例で見てみましょう。

配分方法によって結果はどのくらい変わるのでしょうか。


設定

ある工程から、汎用品の製品Aと、高付加価値品の製品Bが同時に生まれるとします。

工程全体のCO2排出量は1,000 t-CO2eです。


製品A(汎用品)

製品B(高付加価値品)

生産量

800 t

200 t

単価

5万円/t

30万円/t

発熱量

45 MJ/kg

40 MJ/kg


3つの方法で配分すると

工程全体の1,000 t-CO2eを、それぞれの方法で製品Aと製品Bに分けると、次のようになります(どの方法でも合計は1,000 t-CO2eです)。

配分方法

製品A(汎用品)

製品B(高付加価値品)

質量

800 t-CO2e(80%)

200 t-CO2e(20%)

熱量

818 t-CO2e(81.8%)

182 t-CO2e(18.2%)

経済価値

400 t-CO2e(40%)

600 t-CO2e(60%)

図3

読み取れること

この数字を見ると、製品Bに注目した場合、配分される排出量は182 t-CO2e(熱量配分)から600 t-CO2e(経済価値配分)まで、約3.3倍の幅があります。工場も排出量もまったく同じなのに、です。

経済価値で配分すると、少量でも高価な製品ほど負荷が大きくなります。

逆に質量で配分すると、高価な製品も汎用品も同じ1tあたりの負荷になります。


このように、どれが「正しい」というより、それぞれの方法が何を反映しているかを理解して選ぶことが大切です。

質量配分は「物の量」、熱量配分は「エネルギーとしての量」、経済配分は「その工程が何のために動いているか(どの製品が稼ぎ頭か)」を反映していると考えることができます。



  4. 業界別:配分が結果を左右する場面

ここまで数値例で見てきたように、配分方法は結果を大きく左右します。

ここからは、配分が実際に問題になる場面を業界別に見ていきます。

業界

代表的な場面

同時に生まれる製品・サービス

化学

ナフサ分解

エチレン、プロピレン、ブタジエン、BTXなど

化学

食塩電解

苛性ソーダ、塩素、水素

アパレル

綿花の栽培・繰綿

綿繊維、綿実

海運

貨客船(RoPax船)の運航

旅客輸送、貨物輸送


化学:ナフサ分解と食塩電解

まずは、化学産業です。

化学産業は、配分の判断がたびたび求められる業界です。

ナフサ分解では、ナフサを高温で分解する一連の工程から、エチレン、プロピレン、ブタジエン、BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)など、石油化学の基礎原料が同時に得られます。

エチレンだけを取り出して作ることは難しいため、分解工程のエネルギーやCO2を各製品にどう分けるかが、下流のプラスチックや化学品の排出量に大きく影響します。


食塩電解は、さらにわかりやすい例です。

食塩水を電気分解すると、苛性ソーダ・塩素・水素が、重量比でおよそ1:0.886:0.025という一定の比率で生まれます。

この比率は化学反応によって決まるため、どれか1つだけを増産することはできません。


このように、まさに「連産品」の典型で、電解に使う電力をどう分けるかによって、苛性ソーダや塩素を原料とする製品の排出量が変わってきます。


アパレル:綿花の繊維と綿実

綿花を栽培し、繰綿(種と繊維を分ける工程)を行うと、衣料品の原料となる綿繊維と、食用油や飼料に使われる綿実が得られます。

米国の綿花を対象にしたLCA(Cotton Incorporated、2026年公表)では、経済配分を基本とし、栽培から繰綿までの負荷の83%を繊維に、17%を綿実に割り当てています。

繊維のほうが経済価値が高いため、負荷の大部分が繊維にかかる計算です。


このように、同じ調査でも質量で配分した場合と経済配分では結果が変わります。

どの方法を使ったかで綿製品のCFPが変わるため、原料データを使うときは配分方法を確認しておくことをおすすめします。


海運:旅客と貨物を同時に運ぶ船

続いて、海運です。

海運にも配分の問題があります。

旅客と貨物(トラックや乗用車)を同時に運ぶRoPax船では、船の燃料消費によるCO2を、旅客と貨物に分ける必要があります。


こうした配分を実務で考える際、物流の排出量算定には、2023年に発行された国際規格ISO 14083があり、その基盤となったのが業界の算定指針であるGLEC Frameworkです。

RoPax船を含むRoRo船については、欧州の完成車物流の業界団体ECGとSmart Freight Centreが、業界向けのガイドラインづくりを進めてきました。

そのガイドラインでは、配分の主な指標を貨物の重さと輸送距離(トンキロ)としつつ、旅客と貨物のどちらかに排出量が偏って割り当てられないよう、重さと容積の両方を反映する指標を補助的に使う考え方が示されています。

旅客は重さのわりに広い空間を使う一方、車両などの貨物は空間のわりに重いため、重さだけで分けるか、空間も考慮するかによって、貨物側と旅客側の排出量の比率は変わってきます。


こうした前提の違いは、荷主企業がScope3のカテゴリ4・9(輸送・配送)で海上輸送の排出量を見積もる際にも、結果に影響しうることを知っておくとよいでしょう。



  5. 実務で迷ったときの5つのチェックポイント

ここまで見てきたように、配分方法の選択は結果に影響します。

そこで、配分方法を選ぶとき、実務で確認しておきたいポイントを5つにまとめます。


① 評価の目的に合っているか

まず、社内の削減検討に使うのか、顧客への開示に使うのか、他社製品との比較に使うのか。

目的によって、重視すべき観点は変わります。まず目的をはっきりさせることが出発点です。


② 製品ルールや業界ルールの指定はないか

次に、PCR(製品カテゴリールール)などの製品ルールでは、配分方法が指定されている場合があります。

指定があればそれに従うことで、同じルールで算定された他社の結果と比べやすくなります。


③ 感度分析で、複数の方法の結果を示す

さらに、配分方法の選択は、結果の不確かさの要因の1つです。

GHGプロトコルの製品基準でも、配分方法は不確かさに関する報告の対象とされています。

主となる方法で算定したうえで、別の方法でも計算して結果の幅を示しておくと、結果の信頼性を説明しやすくなります。


④ 使用するデータベースと整合しているか

加えて、自社の工程(フォアグラウンド)で配分を工夫しても、原料などのバックグラウンドデータは、データベース側で別の配分方法が使われていることがあります。

使用するデータベースの解説資料で、配分の考え方を確認しておきましょう。


⑤ 似た入出力には同じ方法を使い、報告書に明記する

最後に、ISO 14044もGHGプロトコルの製品基準も、同じシステム内の似た入出力には同じ配分方法を一貫して使うことを求めています。

また、GHGプロトコルの製品基準は、配分を避けた方法や配分の方法について、その内容と理由を開示するよう求めています。

「なぜこの方法を選んだのか」を報告書に書いておくことが、第三者の理解を得るための近道です。



  6. よくある質問

Q1. 経済配分は、価格が変わると結果も変わってしまうのでは?

はい、変わります。

これは経済配分を使うときの注意点です。

そのため、単年の価格ではなく、複数年の平均価格を使って変動をならす方法があります。

たとえば、Textile Exchangeの綿花LCAでは、5年平均の価格にもとづく経済配分が採用されています。


Q2. 副産物と廃棄物の境目はどこですか?

一方、副産物と廃棄物の境目を考える際の目安になるのは、価値の大きさよりも「他の用途に利用されているか、処分されているか」です。

ISO 14044では、排出されるものの一部が副産物で、一部が廃棄物という場合には、その比率を特定し、副産物の部分だけに配分するよう示しています。

同じものでも、売却されていれば副産物、処理費を払って捨てていれば廃棄物、と扱いが分かれることがあります。


Q3. 自社に有利な方法を選んでもいいのでしょうか?

では、自社に有利な方法を選んでもいいのでしょうか。

規格で優先順位が決まっている以上、結果を見てから都合のよい方法を選ぶのは適切ではありません。

ステップ1から順に検討し、選んだ理由を説明できる状態にしておくことが大切です。

判断に迷う場合は、第5章③の感度分析で複数の結果を示すのがおすすめです。



  7.まとめ

ここまでのポイントをまとめると、配分は、1つの工程から複数の製品が生まれるときに、環境負荷を製品ごとに分ける手続きです。


ISO 14044は、「①配分を避ける→②物理的な関係で分ける→③経済価値などで分ける」という優先順位を定めています。


最後に、配分方法によって、製品1つあたりの排出量は数倍変わることもあります。

目的・ルール・データベースとの整合を確認し、選んだ理由を明記しましょう。


配分の考え方を押さえたところで、次回は、リサイクルの数え方を取り上げたいと思います。

ISO 14044では、リサイクルの扱いも配分の原則と手順に従うとされています。

リサイクル材を使った製品や、使用後にリサイクルされる製品のCO2を、どう評価すればよいのかを解説します。


配分方法の選び方に迷ったら、Green Guardianにご相談ください

Green Guardianでは、配分の判断が結果を大きく左右する製品についても、LCAの専門家が配分方法の選定から感度分析、報告書での説明の仕方、第三者認証への対応まで伴走します。

配分方法の選択や結果の説明に迷う場合は、ぜひご相談ください!

また、報告書の記載内容をご自身で点検したい方は、資料ダウンロードページの「LCAチェックリスト」もぜひご活用ください。


社員のプロフィール写真

あわせて読みたい解説記事


主要出典


★ 小野雄也の経歴はコチラをクリック


★ お問い合わせはコチラをクリック

コメント


​メールマガジンのご案内

株式会社GreenGuardianでは、ご登録いただいた方にメールマガジンの配信サービスを行っています。
LCA関連の基礎知識、サステナビリティに関わる日本や海外の動向、基準や規制を含めた、

さまざまな情報をメールマガジン形式でお届けします。是非ご登録ください。

登録無料・不定期配信

登録が完了いたしました

AdobeStock_241865141.jpeg

LCA・地域社会活性化・社会価値の見える化なら

プロフェッショナルな担当が御社のお悩みを解決します

お客様の課題解決をサポートします。
お気軽にご相談ください。

\最新の情報をいち早く受け取れます/

登録無料・不定期配信

bottom of page