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【2025年最新版】GHGプロトコルに従わないとダメ?SSBJ基準の柔軟性とScope3開示の実務判断

  • 執筆者の写真: o a.
    o a.
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです!


今回は"SSBJにおいてGHGプロトコルはどう扱われているのか?"をテーマに

解説していきたいと思います。


以前も、SSBJについての解説記事を出しましたが、

2025年3月に確定したSSBJ基準(日本版サステナビリティ開示基準)では、

企業がGHG排出量(温室効果ガス排出量)を財務情報とともに開示することが求められるようになりました。


このとき、多くの実務担当者やコンサルタントがまず疑問に思うのが、

「GHGプロトコルに沿って出せばいいのか?」

という点ではないでしょうか。


SSBJの気候関連開示ではScope1〜3の開示が求められる一方で、GHGプロトコルへの準拠は“義務”ではないと明記されています。とはいえ、実務ではGHGプロトコルをベースに開示する企業が圧倒的に多いのが実情です。

なぜそうなるのか?この背景を正しく理解することが、SSBJ対応における実務判断のカギになります。



目次



1.GHGプロトコルとは?

🔷 国際的な排出量算定ルールの“共通言語”

GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)は、企業や政府などが温室効果ガス排出量を算定・報告・管理するための国際的なガイドラインです。


  • 策定団体

    • WRI(世界資源研究所)

    • WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)

  • 初版公表:2001年


世界中で最も広く使われており、CDP、SBTi、ISSB基準、CSRD、TCFDなどの制度においても、排出量算定の“基盤”として位置づけられています。


■Scope1〜3の定義(基本構造)

区分

内容

Scope1

自社からの直接排出

工場の燃料燃焼起因する分

Scope2

購入した電力・熱などの間接排出

電力会社の排出に起因する分

Scope3

それ以外の間接排出

仕入れ、輸送、使用、廃棄などバリューチェーン全体

Scope3はさらに15カテゴリに細分化されており、企業は自社に関係のあるカテゴリを選んで算定します。



  2.SSBJではなぜ「準拠を義務付けない」のか?

SSBJの第2号基準(気候関連開示基準)では、次のように明記されています:

「GHGプロトコルに準拠することは義務ではない」

その背景には、SSBJが採用する『原則主義』という設計思想があり、

主に以下のような点が考慮されていると考えられます。:


  1. 柔軟な対応を可能にする

    • 中小企業を含む多様な実務環境に配慮


  2. 日本独自の制度・事情に対応する必要性

    • たとえば電力排出係数の扱いや業界特有のルール

  3. 「原則主義」による開示の自由度を確保

    • 経営判断に応じた説明が可能となるよう設計


したがって、GHGプロトコルに必ず従わなければいけないわけではありませんが、「まったく使わなくてよい」という意味でもありません。



  3.実務的にはどう扱う?GHGプロトコルの“準拠度合い”

■GHGプロトコルが実務上“前提”とされる理由

理由

内容

国際制度との整合性

ISSB、CSRD、SBTi、CDP対応でもベースとして活用されている

分類体系の明確さ

Scope3のカテゴリ設計が分かりやすく、ベンチマークしやすい

外部対応の要求

サプライヤー・投資家・顧客からの「準拠要請」が現実的に多い

特に、Scope3は企業間での“情報の受け渡し”が必要になるため、共通の言語=GHGプロトコルで定義されていることが実務上の利便性になります。


■ 実務での対応例

  • GHGプロトコルを参考にしながら、必要に応じて簡素化や独自手法を採用

  • Scope3の一部カテゴリを割愛・推計ベースで対応(業種により可能)

  • GHGプロトコルとは異なる方法(推計ベースや独自係数など)を採用する場合には、使用した算定ロジック、不確実性の範囲、前提とした仮定条件を明示することで“透明性”を担保



  4.担当者が押さえるべき「使い方と割り切り方」

  • 準拠=正義ではないが、参考にしないと逆に非効率

  • 自社の排出構造に応じてScope3カテゴリを選別

  • 算定手法(原単位法・支出法・活動量法)ごとのメリデメを把握

  • 社内での「準拠方針」を明文化・周知することが重要



  5.おわりに:SSBJとGHGプロトコルをどう位置づけるべきか?

SSBJは、「国際基準に倣うこと」だけを求めてはいません。大切なのは、“なぜその算定方法を選ぶのか”という、企業ごとの納得と説明の積み上げです。

GHGプロトコルにただ従うのではなく、ときに寄り添い、ときに距離をとりながら、“自社らしいサステナビリティ情報開示”を築いていく。それが、SSBJという制度が目指す「原則主義」の真意なのかもしれません。


今後もGreenGuardianでは、情報開示や業界ごとの規制内容、算定手法、などサステナビリティ実務に寄り添う情報を発信してまいります。

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