サステナビリティ情報開示シリーズ #2|SSBJ基準とはなにか
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- 2025年9月29日
- 読了時間: 7分
こんにちは。
インターン生の山口梨奈です。
企業のサステナビリティ情報開示について、各制度や基準ごとにわかりやすくご紹介していくコラムの第二弾をお届けします。
今回のテーマは、日本で新たに整備が進む SSBJ(サステナビリティ基準委員会)の基準です。
サステナビリティ基準委員会とはどのような団体なのか、誰が対象なのか、そしてSSBJ基準とはどのような基準なのかを解説していきます。
目次
2.誰が対象?
5.おわりに
1.サステナビリティ基準委員会とは?
サステナビリティ基準委員会(SSBJ) は、企業が開示するサステナビリティ情報の“ルールづくり”を担うため、2022年7月に生まれた団体です。その背景には、2021年に国際的なルール策定を進める 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB, 本部:カナダ・モントリオール) が設立されたことがあります。日本国内の基準を整備し、国際的な議論に参加していく必要があるという考えのもと、SSBJが誕生しました。
2. 誰が対象?
SSBJ基準は、金融商品取引法*の枠組みにおいて適用されること、特にグローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業(プライム上場企業)が適用することを想定して開発が行われました。
そのため、金融庁は、プライム市場に上場する企業を対象に、時価総額の大きな企業から順次SSBJ基準の適用を開始することを検討しています。適用開始時期の目安は以下のとおりです。
時価総額3兆円以上の企業:2027年3月期から適用
時価総額3兆円未満1兆円以上の企業:2028年3月期から適用
時価総額1兆円未満5千億円以上の企業:2029年3月期から適用(適用時期は引き続き検討)
また、時価総額5千億円未満の企業については、今後の開示状況や投資家のニーズ等を踏まえて検討が進められる予定です。
SSBJ基準は本来プライム市場の上場企業を想定して作られていますが、それ以外の企業による利用も奨励されています。金融商品取引法以外に金融庁や環境省が定める開示制度に基づく開示や、任意で行うサステナビリティ開示でも活用できる仕組みになっているのです。
*金融商品取引法とは、株式や債券といった金融商品の取引に関するルールを定めた法律で、投資家を守るために「企業は正しい情報を開示すること」が求められています。上場企業が毎年提出している有価証券報告書も、この法律に基づくものです。今後はその有報にサステナビリティ情報を盛り込む際に、SSBJ基準が使われることになります。
3.SSBJ基準の概要
SSBJ基準は、ゼロから独自につくられたものではなく、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が策定した国際基準をベースにしています。
ISSBの基準は「S1(全般ルール)」と「S2(気候関連)」の二本柱で構成されており、SSBJもこれに準拠し、日本の状況に合わせて整備された以下の二層構造となっています。
サステナビリティ開示ユニバーサル基準(適用基準)
サステナビリティ開示テーマ別基準(一般開示基準・気候開示基準)
ユニバーサル基準は、基準の全体像の説明及び基本となるルールを定めたものです。
テーマ別基準は、サステナビリティ情報に関する全般的な開示及びテーマ別の開示を定めるもので、「一般開示基準」と「気候関連開示基準」の2つから構成されています。
二つの基準についてもう少しわかりやすく説明します。
🔹 ユニバーサル基準:全体ルールの土台
ユニバーサル基準は、サステナビリティ情報開示の憲法のような位置づけです。
「どのタイミングで開示するのか」「どんな目的で開示するのか」といった、全体のルールのように基本となる事項を定めています。
例えば、
· 財務諸表と同じ期間・同じタイミングで報告すること
· 投資家の意思決定に資する情報であること
· マテリアリティ(重要性)に基づいて開示範囲を判断すること
· 一貫性や比較可能性を確保すること
などが含まれます。
🔹 テーマ別基準:分野ごとの開示内容
先ほども述べたように、SSBJ基準のテーマ別基準には「一般開示基準」と「気候関連開示基準」があります。両者に共通しているのは、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標という「四つの柱」に沿って情報を開示することです。
ただし、開示の対象と深さに違いがあります。
一般開示基準
すべてのサステナビリティ課題に共通する「基本形」として、投資家など財務報告書の主要な利用者が意思決定に活用できる情報を求めています。つまり、企業が直面するサステナビリティ関連のリスクや機会が、将来的に財務状況や事業にどのような影響を与えうるのかを示すことが目的です。
気候関連開示基準
一般開示基準と同じ四つの柱を前提にしつつ、TCFD提言を踏まえて、気候変動という特定のテーマを掘り下げる基準です。財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する 意思決定を行うにあたり有用な情報の開示が目的です。ガバナンスやリスク管理に加え、シナリオ分析に基づく気候レジリエンスの評価や、温室効果ガス排出量(スコープ1・2・3)・内部炭素価格・削減目標といった具体的な指標や目標を明確に示すことが求められます。
4. 企業はSSBJ基準のすべてを満たす必要があるのか?
SSBJ基準の全体像を理解したところで、次に気になるのは「基準をすべて満たす必要があるのか?」という点ではないでしょうか。
結論から言えば、原則としてユニバーサル基準・一般基準・気候関連基準をセットで適用する必要があり、さらに基準に定められた要求事項を満たし、開示することが求められます。
ただし重要なのは、「すべての企業が一律に全項目を開示しなければならない」ということではありません。
基準の前提には マテリアリティ(重要性)の考え方 があります。
つまり、自社にとって重要なサステナビリティ課題については丁寧に開示する必要がありますが、影響が限定的で重要性が低いと判断される項目については、その旨を説明することで対応できます。
さらに、制度としての適用開始時期や対象企業はまだ明確に定められていないため、実務的には 最初から完璧にすべてを開示するのではなく、段階的に整備していく ことが現実的なアプローチになるでしょう。
要するに、SSBJ基準は「チェックリストのように全部埋めるもの」ではなく、投資家にとって重要な情報を中心に、自社の状況を踏まえて開示を組み立てていくものだと言えます。
5.おわりに
SSBJ基準は、国際的な流れを踏まえつつ、日本の実情に合わせて整備された新しい枠組みです。
今はまだ導入段階ですが、今後、具体的な運用ルールや適用範囲が定まれば、企業にとって重要なルールとなっていくことが予想されます。
本コラムが、みなさまのSSBJ基準に対する理解を深める一助となれば幸いです。
今後もGreenGuardianでは、情報開示や業界ごとの規制内容、データベース関連など多岐にわたり、サステナビリティ実務に寄り添う情報を発信してまいります。
また、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにしたサポートや、現場目線でのコンサルティングを通じて、脱炭素やサステナビリティ対応もお手伝いしています。
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