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IMOの新目標に間に合うか?海運業界の脱炭素は「燃料以外の対策」も急務

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    o a.
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです!

今回のテーマは、"海運と気候変動──注目が集まる中で見落とされがちな視点"です。


国際海運業界の脱炭素化をめぐっては、ここ数年で大きな動きが続いています。


Green Guardianでもこれまで、


といった記事を通して、最新の動きや制度の背景を解説してきました。

こうした中で、2025年に公表されたある論文が、重要な問いを私たちに投げかけています。それは──

「いま、脱炭素の“視点”は偏っていないか?」

ということです。


この記事では、論文『Beyond Fuel: the case for a wider perspective on shipping and climate change』を紹介しながら、海運業界の気候戦略を考える上で欠かせない「視点の転換」についてお伝えします。

ぜび最後までお付き合いください。



目次



1. 海運業界と気候変動──いま何が問われているのか?

地球規模で進む気候変動。海運業界もその例外ではありません。

世界中の貨物の9割以上が船で運ばれており、それに伴うGHG排出量は世界全体の約3%。この割合は、航空業界とほぼ同じです。


そのような中で、国際海事機関(IMO)は、2023年に気候変動対策として新たな戦略を打ち出しました。

最終目標は「2050年にネットゼロ」。

そして途中段階として、2030年には少なくとも20%、できれば30%の排出削減(“努力”目標)、2040年には70~80%の削減を目指しています。


しかし現実は、2050年という“ゴール”ばかりが注目され、足元の2030年目標にはまだ十分な光が当たっていない印象です。そんな中、「ちょっと立ち止まって考えよう」と提案する論文が発表されました。



  2. 論文『Beyond Fuel』が問いかける「視点の転換」

2025年に公表された『Beyond Fuel: the case for a wider perspective on shipping and climate change』は、その名の通り「燃料の話にとどまらず、もっと広く考えるべきでは?」というメッセージを発信しています。


この論文が伝えているのはシンプルですが力強い主張です。

「本当に重要なのは、“何を燃やすか”ではなく、“いつ、どれだけ減らせるか”。」

気候変動の影響は「累積排出量(これまでに出した温室効果ガスの合計)」によって決まります。

つまり、今すぐに出すCO₂をどれだけ減らせるかが、将来の気候を左右するということです。

そのためには、燃料の入れ替え(脱炭素燃料)だけに頼らず、「省エネ」や「運航効率の改善」といった、すぐにできる対策ももっと重視するべきだと論文は説いています。



  3. GreenGuardianの視点:まずは足元の対策から


GreenGuardianでは、さまざまな業界の企業・自治体とともに脱炭素戦略を考える機会があります。

その中で感じるのは、「脱炭素=新しい燃料や画期的な技術」といったイメージが先行しやすいこと。


今回紹介する論文が提案している「まずは、既存の仕組みを見直して、省エネや効率化に注力する」という視点は、海運に限らず、他の産業にも応用できる重要な発想だと感じます。


たとえば海運業界では、論文で以下のような対策が紹介されています:

  • 風力支援装置(Flettnerローターなど)の導入

  • 港湾での待機時間を削減する運航最適化(Blue Visbyなどの実証例)

  • shore power(陸上からの電力供給)の活用


これらは、大規模なインフラ整備を待たずとも取り組める“今できる対策”であり、短期的な排出削減に貢献します。


当社としても、「長期目標とあわせて、足元の改善も見逃さない」──そんな姿勢を大切にしています。



  4. その気候戦略、「累積排出」で考えられていますか?

「うちは2050年にゼロを目指しています」と言う企業は増えました。

でも、2030年までの取り組みが弱ければ、その“ゼロ”は帳尻が合わない可能性があります。


未来を見据えた燃料戦略も大切です。

ただし、「すぐにできる省エネ対策」と「長期的な燃料転換」、この2つを両輪で回すことが必要です。


私たち自身も、「LCA(ライフサイクルアセスメント)で出したCO₂をどう削減するか」をお客様と一緒に考える中で、この両立の重要性を改めて感じています。



  5. おわりに:燃料を超えて、視点をひろげよう

論文『Beyond Fuel』が伝えたかったのは、「新しい燃料に期待するだけでは足りない」ということ。

むしろ、いまある船、いまある技術、いまある運航スタイルのなかに、大きな改善余地が眠っています。


「2050年のゼロ」を語るなら、「2030年の達成」から目をそらさず、一歩ずつ進むことが、もっとも現実的な“脱炭素”への道なのかもしれません。


私たちのコラム記事では今後も海運関連の論文紹介や、IMOの規制動向について適宜発信していきますし、他業種の排出規制状況などについても調査・発信していく予定です。

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また、私たちGreenGuardianでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにしたサポートや、現場目線でのコンサルティングを通じて、脱炭素やサステナビリティ対応をお手伝いしています。

「何から手をつけたらいいか分からない」という方も大歓迎です。気軽に話せる【LCAまわりの“コンサル”】として、お困りごとを一緒に整理するところから伴走します。

ご相談はいつでもお気軽にどうぞ!



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🔗 参考リンク・出典


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