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【2025年最新】IMO vs EU:海運の環境規制は何がどう違う?多くの業界に影響するってほんとう?

  • 執筆者の写真: o a.
    o a.
  • 3月24日
  • 読了時間: 6分

こんにちは!

LCAコンサルタントの小野あかりです。


以前、海運業界のサステナビリティに関するコラム記事を書きました。


上記のコラムでも少し触れましたが、海運業は世界の貿易量の約80%を担う一方、温室効果ガス(GHG)排出量の約3%を占めており、気候変動対策の観点からも注目されています。

海運のGHG排出削減については、国際機関のIMO(国際海事機関)がルールを策定してきましたが、近年はEU(欧州連合)による独自の規制も加速しており、両者のギャップが企業活動に影響を及ぼし始めています。

本コラムでは、IMOとEUの規制の違い、CII評価制度の概要と各国の傾向、業界別の影響シミュレーションまで、概要をかいつまんで解説していきます。



目次



1. 国際ルール:IMOによる脱炭素戦略

IMOは国連の専門機関として、国際航海に関する環境基準を策定しています。

◆ 2023年に改訂されたGHG戦略:

  • 2050年までに温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロに

  • 2030年までにGHG排出を20~30%削減(2018年比)


◆ 上記の戦略を経て導入済みの制度:

  • EEXI(Energy Efficiency Existing Ship Index) 既存船の設計燃費性能を評価

  • CII(Carbon Intensity Indicator) 船舶の年間運航効率(CO₂排出効率)をA~Eで評価



1-1.CIIランク評価とは?

CIIは、船舶が1年間にどれだけ効率よく貨物を輸送できたかを評価する仕組みです。IMOに毎年報告され、A〜Eの5段階でランク付けされます。

  • 対象:総トン数5000以上の国際航行船舶

  • 指標:年間CO₂排出量 ÷ 輸送量 ÷ 航行距離

ランク

意味

船社の対応義務

A

優良(major superior)

義務なし(推奨ベストプラクティスあり)

B

優(minor superior)

義務なし

C

合格ライン(moderate)

義務なし(IMOの基準を満たす)

D

やや不適合(minor inferior)

2年連続D評価で「改善計画」提出が義務化

E

不適合(major inferior)

翌年には必ず改善措置の実施が義務化

「改善計画(SEEMP改訂)」には、燃費向上策や運航速度制限などの具体策が必要です。

港湾当局によっては、D・Eランク船の監査や入港制限の対象になるリスクもあります。



1-2.国別に見たCII評価の傾向:日本建造船が優勢

国土交通省の調査(2023年)によると、船舶の建造国によってCIIランクの分布に差が出ています。

建造国

A+Bランク割合

D+Eランク割合

🇯🇵 日本

55%

17%

🇰🇷 韓国

36%

33%

🇨🇳 中国

34%

36%

 日本建造船は最も高評価を得ている比率が高く、設計・技術面での優位性が示唆されます。

(出典:国土交通省 – CII評価分析)



  2. 地域ルール:EUによる独自規制

EUは「欧州グリーンディール」の方針のもと、IMOよりも先行して具体的な法制度を導入しています。

◆ EU-ETS(排出権取引制度)の海運適用

  • 2024年:排出量の40%が対象、2026年には100%

  • 欧州港に出入りする全船舶(国籍問わず)が対象

  • CO₂排出1トンあたり約85ユーロ(約13,000円)で排出権の購入が必要


◆  FuelEU Maritime(2025年施行)

  • 船舶燃料のGHG排出強度に基準を設定

  • 再生可能燃料やe-メタノールなどの導入を促進




  3. IMOとEUのギャップ

観点

IMO(国際ルール)

EU(地域ルール)

対象範囲

全世界の国際航行船舶

EU港湾を利用する船舶すべて(国籍問わず)

排出量規制

割当なし、削減目標のみ(自主的)

排出権取引制度により強制的な炭素コスト発生

適用開始時期

2023年:CII・EEXI開始

2024年:EU-ETS、 2025年:FuelEU Maritime

規制のスピード

比較的慎重(全会一致に近い合意が必要)

迅速で積極的(欧州グリーンディールの一環)

拘束力

加盟国合意に基づく(緩やか)

法的拘束力が強く、罰則付き

罰則

基本的に穏やか

排出量未報告や基準違反にはペナルティあり



  4.Scope3やLCAへの影響は?

ここが日本企業が見落としがちなポイントです。

  • 欧州に輸出している企業は、海上輸送に伴うCO₂排出(Scope3カテゴリ9)が実質的に“価格化”されるようになります。

  • 今後、荷主企業が輸送手段を選定する際に、GHG排出量が意思決定に組み込まれる可能性が高まります。


CSRD(欧州のサステナビリティ報告義務)やSBTiに関心のある企業にとっては、輸送排出量の見える化と対策が今後避けられないテーマとなっていくでしょう。

特に以下のような企業は、早期の対応が求められます

  • 欧州と取引がある製造業・商社・小売業

  • CDPやSBTi、CSRDなどに対応を検討している企業

  • Scope3排出量の算定やLCA分析を進めている企業



  5.業界別のEU規制インパクト:シミュレーション

EUやIMOの海運規制が、各業界の企業活動にどの程度の影響を与えるかを定量的・視覚的に把握するために以下のようなシミュレーションを行ってみました。

このシミュレーションを行うことで、IMOやEUの規制(EU-ETS、FuelEU Maritimeなど)がどの業界の物流・コスト・GHG排出にどのような影響を与えるのかを把握することができます(※あくまでもシミュレーションです)。


◆ アパレル・ファッション業界

  • 年間5,000TEUをアジアから欧州に輸送

  • CO₂排出:約3,750t

  • EU-ETS初年度コスト:約2,000万円

Scope3カテゴリ9(輸送)での報告に直結し、ブランド価値やCDPスコアにも影響します。


◆ 化学・素材業界

  • 年間10万トンをバルク船で輸送

  • CO₂排出:約30,000t

  • EU-ETS初年度コスト:約1.6億円

FuelEU Maritimeによって、将来的に化石燃料使用船の利用制限や追加コストのリスクあり。脱炭素対応型の輸送戦略や船社選定が喫緊の課題になります。



  6.おわりに

冒頭でも述べたとおり、海運業は世界の貿易量の約80%を担う一方、温室効果ガス(GHG)排出量の約3%を占めており、気候変動対策の観点からも注目されています。

そういった背景から、IMOは排出規制ルールを作りながら、海運業界全体の脱炭素を推進していこうと動いています。

CIIやEU-ETSといった制度の名称を聞くと、一見「海運会社の話」「大企業だけが関係ある話」と思われがちです。

しかし、モノがグローバルに動くこの時代において、実際にはアパレル・化学・電子部品など、多くの日本企業が海上輸送を活用しており、EUの制度は距離に関係なく“港を使えば対象”となる仕組みです。

また、CIIランクは今後、「どの船を使うか」を決める際の新たな評価軸にもなっていく可能性があります。Scope3排出量やLCAの信頼性を高める意味でも、こうした船舶評価指標との連動は重要です。


IMOやEUの規制関連は動きが早く、企業として先手を打つためには常に動向をウォッチしておく必要があります。

私たちのコラム記事では今後も海運業界の規制動向について適宜発信していきますし、他業種の排出規制状況などについても調査・発信していく予定です。

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