ウォーターフットプリント完全ガイド|ISO 14046に沿った測り方・算定方法をQ&Aで解説
こんにちは!
LCAコンサルタントの小野あかりです。
今回はウォーターフットプリントをテーマに解説をしていきたいと思います。
「ウォーターフットプリント(Water Footprint:WF)って、要するに“どれだけ水を使ったか”のことですよね?」――そう思われる方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。
世界共通のルールである国際規格「ISO 14046」では、水の量などを集計しただけの結果を「ウォーターフットプリント」とは呼びません。
この名前が使えるのは、その水の使い方が環境にどんな影響を与えるかまで評価した結果だけ、と決められているんです(集計した結果そのものを報告することはできますが、「ウォーターフットプリント」という名前は使えません)。
一方で、国の研究機関である産業技術総合研究所(産総研)は、「ウォーターフットプリントには、標準的な手法が2つある」と整理しています。これもQ1でご紹介します。
この記事では、
「何を測るの?」
「どう測るの?」
「測ったあとはどうするの?」
という疑問を7つのQ&Aにまとめ、専門用語もできるだけかみくだいてお答えしていきます。
ぜひ最後までお付き合いください。
なお、弊社代表の小野雄也は、LCAの実務に約20年携わり、ウォーターフットプリントのデータベース研究で博士号を取得しています。
📖 前編・関連記事のご紹介本記事は「測り方」と「結果の扱い」に絞ってお届けします。関連する記事はこちらです。
企業が水を測る理由や、国ごとの制度・情報開示のルールについては、この記事では深く触れません(上の関連記事をご覧ください)。
※本記事は2026年9月16日時点の情報に基づきます。
この記事によく出てくる言葉
本文に入る前に、よく出てくる言葉を簡単にご紹介します。
途中で分からなくなったら、ここに戻ってきて貰えると良いと思います。
LCA(ライフサイクルアセスメント): 製品の「一生」(原料の採取→製造→使用→廃棄)を通して、環境への影響を数字で評価する手法です。
ISOとISO 14046: ISO(国際標準化機構)は、世界共通のルール(国際規格)をつくる機関です。 ISO 14046は、その中でもウォーターフットプリントの評価のしかたを定めた国際規格です。
インベントリ分析: どこで、どれだけの水を取り入れ、どれだけ出したかなどのデータを集めて整理する作業です。 家計簿でいえば「何にいくら使ったか」を記録する段階です。
インパクト評価(影響評価): 集めたデータをもとに、その水の使い方が環境にどれくらいの影響を与えうるかを見積もる作業です。 家計簿でいえば「その出費が家計にどれくらい響くか」を考える段階です。
流域: 降った雨が集まって、同じ川に流れ込む範囲のことです。
もうひとつ、規格の文章の読み方のコツです。
規格では、「〜しなければならない」は必ず守るべきこと(要求事項)、「〜することが望ましい」はそうすることが推奨されること(推奨事項)として使い分けられています。
本文でもこの2つを区別して書いています。
目次
Q3.ウォーターフットプリントは、どうやって測るのですか?工場の水道メーターを読むだけではダメですか? Q4.どこまでの範囲を測るのですか?製品ごとに測るのと、組織ごとに測るのは違うのですか? Q5.サプライチェーンの水データが手に入らないときはどうするのですか? Q6.同じ1m³の水でも、場所によって評価が変わるのは、どういう仕組みですか? Q7.測った数字は、その後どう使えるのですか?
Q1.ウォーターフットプリントとは何ですか?「2つの手法」とは何ですか?
ウォーターフットプリントとは、ひとことで言うと、製品や会社の活動が「水」とどう関わり、環境にどんな影響を与えているかを見える化するための考え方です。
「フットプリント(足あと)」という名前のとおり、私たちの活動が水に残す“足あと”を測るイメージですね。
ただ、「何を」「どうやって」測るかが人によってバラバラでは、数字を比べたり信頼したりできません。
そこで、測り方のルールがまとめられています。
そのひとつが、国際標準化機構(ISO)が定めた国際規格「ISO 14046」です(もうひとつの代表的な手法は、このQ1の後半でご紹介します)。
ISO 14046では、ウォーターフットプリントを「水に関係する、潜在的な環境影響を数字で表す指標」と定義しています。
「潜在的な」とは、「実際に起きた被害」ではなく「起こりうる影響」という意味です。
また、この名前をただし書きなしで使えるのは、水に関係する環境影響をひととおり(包括的に)評価した場合だけです。
そうでない場合は、「ウォータースカーシティ(水不足)フットプリント」や「非包括的ウォーターフットプリント」のように、ただし書きの言葉(限定子)を付けた名前でしか呼べません。
ISO 14046は、LCAの考え方をもとにつくられています。
製品・工程(プロセス)・組織のウォーターフットプリントを評価するときの「原則」「要求事項」「指針」をまとめたものです。
規格の具体的な中身は、Q3でご紹介します。
【注記】規格そのものの動きについて ISO 14046(2014年版)は、2014年8月に発行されました。ISOの規格は、定期的に「このままでよいか」を点検する決まり(系統的見直し)になっていて、2020年の点検では、今の版のまま維持することが確認されています。その後、2025年10月15日に再び点検が始まり、2026年3月5日にその期間(レビュー期間)が終わりました。ただ、その結論は、本記事の情報基準日の時点ではISO公式ページに載っていません。最新の状況は、記事末尾の主要出典にあるISO公式ページでご確認ください。
もうひとつ、ISO 14046が大切にしているのが、「どこで」「いつ」水を使ったかという視点です。
規格は「地理的関連性」という原則として、評価の目的と範囲に合った広さ(尺度)と細かさ(分解能)で評価すること(たとえば流域ごとに見るなど)と、その地域の事情を考えることを挙げています。 また、集めたデータを影響の大きさに換算する段階(特性化)では、地域の条件を考えなければなりません。 季節による違いなど時期の要素も、関係する場合は考えなければなりません。
産総研が整理する「2つの標準的手法」
では、Q1のタイトルにある「2つの手法」とは何でしょうか。
産総研の安全科学研究部門は2025年に、ウォーターフットプリントの標準的な手法として、次の2つがあると整理しています。
Water Footprint Network(WFN)という国際的なネットワーク組織の「The Water Footprint Assessment Manual」(マニュアル)にもとづく方法
LCAをベースにした国際規格「ISO 14046:2014」にもとづく方法
どちらも同じ「WF」という名前なのに、どこが同じでどこが違うのかをめぐって、混乱や批判も見られてきた、と産総研は説明しています。
この2つについて、それぞれの立場(コミュニティ)の国際的な専門家16名が、両者の特徴を整理しました(Berger et al. 2025)。
産総研はその成果を、次のように紹介しています。
WFNのマニュアルに基づく評価 | LCAベースの評価 | |
産総研の紹介する整理 | 農業や川の流域での水の使い方の管理、地域全体の水の使い方の効率や、水の汚れ(汚染)の総量をつかむのに役立つ | 水をどれだけ使ったかだけでなく、それによって人や生きもの(生態系)に起こりうる影響まで評価できる。原料の調達から製造・販売まで複雑につながったサプライチェーンの中で、影響を見渡せるのも強み |
そのうえでこの整理は、「2つの手法を、互いに補い合う形で使える可能性」を強調して締めくくっている、と産総研は紹介しています。
WFN側の手法の由来(環境省の事例集)
ちなみに、WFNの手法のルーツについて、環境省が2014年に公表した事例集には次のように書かれています。
ーーー
ウォーターフットプリントという考え方は、水文学(地球上の水の循環を研究する学問)の分野から生まれました。 そして2003年に、ユネスコの水に関する教育研究機関(UNESCO-IHE)のHoekstraら水文学の研究者が、WFNの手法にあたる計算方法を提唱した、とされています。
Q2.取水量を集計すれば、ウォーターフットプリントとして報告できますか?
ひとことで言うと:いいえ。
水の量を集計しただけでは、「ウォーターフットプリント」とは呼べません。
環境への影響まで評価してはじめて、この名前が使えます。
ISO 14046では、水の量などを集計した結果(インベントリ分析の結果)を報告すること自体は認められています。
ただし、それを「ウォーターフットプリント」という名前で報告してはいけないと決められています。
この名前は、環境への影響まで評価した結果(影響評価の結果)にだけ使うからです。
規格の中でも、「集計(インベントリ分析)」と「影響の評価(インパクト評価)」は、別々のステップとして分けられています。
そのため、取水量(取り入れた水の量)を足し合わせただけの数字は、まだ影響の評価をしていないので、「ウォーターフットプリント」としては報告できない、と私は考えています。
家計簿でいえば、出費を記録しただけで、家計への響き具合はまだ判断していない状態ですね。
ちなみにISO 14046では、集めることを検討すべきデータのひとつに「水使用量」が挙げられていて、そこには「取水(水を取り入れること)」と「放出(使った水を外に出すこと)」の両方が含まれます。
取水と水消費は別のものです
ここで、ISO 14046の用語を整理しておきましょう。
似ているようで、意味が違います。
取水: 人が、川・湖・地下水などの水域や流域から水を取り出すこと。 取り出したままでも、一時的に取り出すだけでも「取水」にあたります
水消費: 取り出した水のうち、元の流域に戻らない分を指すことが多い言葉です。 戻らない原因には、蒸発、植物の葉から水が出ていくこと(蒸散)、製品の中に取り込まれること、別の流域や海に流すことがあります
また規格では、土地の使い方が変わったこと(土地利用変化)によって蒸発量が変わった分も、水消費として扱います。
私はこの説明に沿って、使った水を「同じ流域に戻した分」と「蒸発した分や、別の流域に流した分」に分けて見るようにしています。
同じ量の水を取り入れても、どれだけ戻したかによって「水消費」の量は変わってくるからです。
参考:環境省の事例集(2014年)の記載
環境省の事例集(2014年)にも、関連する記載があります。
水の量を集計しただけの段階(インベントリ段階)で「影響が大きい工程はここだ(ホットスポット)」と判断すると、誤った判断(ミスリード)につながるおそれもある。
だから、水の希少性(Scarcity:その地域で水がどれだけ貴重か)について、一定の影響評価を行うことが重要だ、というものです。
この「希少性」の考え方は、Q6でくわしくご説明します。
Q3.ウォーターフットプリントは、どうやって測るのですか?工場の水道メーターを読むだけではダメですか?
ひとことで言うと:水道メーターの数字は大切な材料ですが、それだけでは足りません。
「何のために測るか」を決め、水の量や使った場所・時期などのデータを集め、影響を評価し、結果を読み解く、という4つのステップで進めます。
ISO 14046に沿って評価するときは、次の4つのステップを必ず含めなければなりません。
① 目的及び調査範囲の設定(何のために、どこまでを測るかを決める)
② ウォーターフットプリントインベントリ分析(水の量や水質などのデータを集めて整理する)
③ ウォーターフットプリントインパクト評価(その水の使い方が環境に与えうる影響を見積もる)
④ 結果の解釈(結果から何が言えるか、どこに注意が必要かを考える)
なお、③のインパクト評価を行わずに、①②④の3ステップで行う調査は「ウォーターフットプリントインベントリ調査」と呼びます。
影響の評価まで行うかどうかで、呼び方が変わるわけです。
①目的及び調査範囲の設定
これは規格のルールではなく、あくまで目的の一例です。
環境省の事例集(2014年)は、評価の主な目的として「情報開示(社外への情報公開)」「リスク分析・社内の改善」「国民の水環境を守る意識を高めること(啓発)」の3つを挙げています。
社外に情報を公開するためなのか、社内で改善できるポイントを見つけるためなのか。
ここがあいまいなままデータを集め始めると、あとのステップで困ることになる、と私は考えています。
収集を考慮すべきデータは、水量だけではありません
規格では、集めることを検討すべきデータとして、次のものを挙げています。
水の量だけではない、というのがポイントです。
使用水量(取水と放出を含む)
水源の種類
水質
水の使い方(水利用の形態)
土地の使い方の変化(土地利用変化)などによって起こる、排水・川の流量・地下水の流れ・蒸発の変化
水を使った場所
季節による変動
時期などの時間的な側面
「どこで水を使ったか」や「季節による変動」まで挙げられていることからも、水道メーターの数字だけでは足りない、と私は考えています。
Q4.どこまでの範囲を測るのですか?製品ごとに測るのと、組織ごとに測るのは違うのですか?
ひとことで言うと:製品1つを測るのか、会社全体を測るのかで、決めることが変わります。
会社全体を測る場合は、どこまでを自社に含めるかを決めて、文書に残す必要があります。
ISO 14046には、会社などの「組織」を対象に評価する場合のルールもあります。
組織のウォーターフットプリントを評価する場合は、どこまでを自社の範囲とするか(組織境界)を決め、グループ会社などをどう取りまとめるか(連結方法)を文書に残さなければならないと決められています。
連結方法には、経営を実質的にコントロールしているかどうかで決める方法(支配力による方法)と、出資している割合に応じて含める方法(出資比率による方法)があり、どちらを使ったかを文書に残します。
また、ただし書き(限定子)を付けずに「組織のウォーターフットプリント」と名乗れるのは、その組織が直接関わる水(自社の工場で使う水など)と、間接的に関わる水(原材料の生産など、自社の外で使われる水)の両方を、包括的な評価の中で考慮した場合だけです。
つまり、自社工場で直接使った分だけを評価した結果を、ただし書きなしで「当社のウォーターフットプリント」と呼ぶことはできません。
製品1つの評価と、事業全体の評価
環境省の事例集(2014年)には、次のように書かれています。
衣料品1着(製品1点)を評価すると、影響の大きい工程(ホットスポット)が分かり、製品開発の手がかりにできる。
しかし、1着の評価だけでは水リスクの評価には直結しない。
水リスクを検討するには、その製品が全部でどれだけ売れているか(総販売量)も考える必要がある――というものです。
1着あたりの影響は小さくても、たくさん売れれば事業全体では大きくなりうる、というイメージです。
Q5.サプライチェーンの水データが手に入らないときはどうするのですか?
ひとことで言うと:できるだけ現場のデータを集めるのが基本ですが、集められない部分はデータベースの数字で補えます。
ただし、重要な工程でデータベースの数字を使うときは、その理由を文書に残す必要があります。
ISO 14046では、データを次のように使い分けることが望ましいとされています。
一次データ(現場で直接測った数字や、それをもとに計算した数字): 集められる場合は、集めることが望ましい
二次データ(データベースや文献など、一次データ以外の数字): 一次データを集めることができない、または現実的でない場合にだけ使うことが望ましい
そのうえで、重要な工程に二次データを使う場合は、その理由を筋道立てて説明し(正当化し)、文書に残さなければなりません。
あわせて、包括的な評価では、「データがないから」という理由で、関係する影響(影響領域)を評価の対象から外してはいけない、と決められています。
原単位データベースの例
一次データが取れない工程について、私は次のような「原単位データベース」を二次データの候補として検討します。
原単位とは、「1円分買うと何リットル」「1kg作ると何リットル」のように、金額や数量あたりの水の量を表した数字のことです。
環境省の事例集(2014年)では、東京都市大学 伊坪徳宏研究室(当時)の「水使用量・消費量データベース」が紹介されています。
403の分類ごとに、金額あたりの取水源別の水量(L/円:1円あたり何リットルか)がまとめられたデータベースです。
このデータベースは、「産業連関分析」という方法でつくられています。
国内の産業どうしのモノやお金のやり取りをまとめた表(産業連関表)を使って、取引先をさかのぼり、間接的に使われた分まで含めて計算する方法です。
ある製品をつくるときには、その原材料や部品をつくる段階でも水が使われていますが、そうした分までまとめて数字にできるのが特徴です。
実は弊社代表である小野雄也は、伊坪徳宏研究室に在籍していたときに、このデータベースを開発しました。
産総研が公表しているデータベースとツール
また、産総研などの研究チームは、日本が購入する全406部門の財について、関わる水資源の消費量を「原単位」にしたデータベースを、論文の補足情報として公開しています。
さらに産総研は、「グローバルサプライチェーン水リスク分析シート」というデータベースとツールを開発しています。
日本で購入されるすべてのモノやサービスを約400のカテゴリに分け、世界231カ国のどこで、どれだけ水が使われ、どんなリスクが生じているかを数字で分析できるものです。
入力するのは、調達したものの購入金額です。
そのため、会計の情報(何をいくらで買ったか)から分析できる仕組みになっています。
分析できる項目は、水消費量、水消費に伴う生態系への影響、干ばつや季節変動などによる水供給不足のリスク、環境容量超過量です。
原単位データベースに向き合う理由については、【水のインベントリデータベース開発者が語る】原単位データベースに、いま向き合う理由 でくわしくお話ししていますので、よろしければご覧ください。
Q6.同じ1m³の水でも、場所によって評価が変わるのは、どういう仕組みですか?
ひとことで言うと:水がたくさんある地域と、水が足りない地域とでは、同じ1m³を使っても環境への負担が違うからです。
規格では、その違いを地域ごとの「係数」で結果に反映させる方法が推奨されています。
ここでは、ISO 14046の用語を2つ見ておきましょう。
水不足:ある地域で、水の需要(使われる量)と補充(雨などで補われる量)を比べた度合い。水質は考えません
水利用可能性:人と生態系が、必要とする分に対して十分な水資源を得られる度合い。場所や時期によって変わり、水質も影響しうる、と規格には書かれています
そして規格では、水の量だけに注目した評価(水の量のみを考慮する水利用可能性フットプリント)を「ウォータースカーシティ(水不足)フットプリント」と呼ぶことが望ましい、としています。
その計算には、地域ごとの水不足の違いを考慮した計算モデル(特性化モデル)から導かれる「特性化係数」を使うことが望ましい、とされています。
特性化係数とは、集めた水の量(インベントリの結果)を、環境への影響の大きさ(影響の指標)に換算するための係数です。
私の理解では、この係数を使うことで、流域ごとの水不足の違いが結果に反映されます。
たとえば、水が豊富な地域で使う1m³と、水が乏しい地域で使う1m³とでは、後者のほうが影響は大きく見積もられます。
家計簿のたとえでいえば、同じ1万円の出費でも、家計に余裕があるかどうかで重みが違う、というイメージです。
Q7.測った数字は、その後どう使えるのですか?
ひとことで言うと:社内の改善や社外への情報開示などに使えますが、使い方にはルールがあります。
特に、「他社製品より優れている」とアピールする使い方には制限があります。
TNFD・CDP(企業の環境情報の開示に関わる国際的な枠組み・団体)や日本の政策動向については、【LCAコンサルタントが解説】水リスクとは? で扱っています。
ここでは、測った結果を使うときに、規格上どんな点に気をつけるべきかをお伝えします。
結果を使う前に知っておきたい注意点が、4つあります
その1:結果にオフセットを含めてはなりません。 オフセットとは、評価の範囲の外で行った取り組み(たとえば別の場所での水源保全など)によって、自社の影響を「差し引く」考え方のことです。
規格では、ウォーターフットプリントの結果にこうしたオフセットを含めてはならない、と定められています。
その2:水だけを評価した結果を、比較主張の根拠にはできません。
比較主張とは、「当社の製品は、同じ働きをする他社製品より環境面で優れている(または同等だ)」のように主張することです。
規格では、水だけを対象にした評価(単独のウォーターフットプリント評価)を、比較主張の根拠にしてはならないと定められています。
また、種類の違う影響に重要度に応じた重みをかけてまとめる「重み付け」を行った結果も、公表を前提とした比較主張の根拠に使ってはならない、とされています。
その3:ラベルや宣言は、この規格の対象外です。
結果を「報告」することは規格の対象範囲に入っていますが、製品に付ける環境ラベルや環境宣言のように、結果を「伝える(コミュニケーションする)」ことは対象範囲の外です。
報告することと、ラベル・宣言で伝えることとでは、規格上の扱いが違う点に注意が必要です。
その4:そもそも、水だけでは環境全体は語れません。
ウォーターフットプリント評価だけでは、製品・工程・組織が環境全体に与えうる影響を説明するには不十分だ、と規格自身が述べています。
気候変動など、水以外の環境影響は別に評価する必要がある、ということですね。
また規格には、集めたデータを特定の環境影響へ一貫して正確に結びつける方法について、ただ1つの合意された方法はなく、影響の種類ごとに計算モデルの発展段階にも差がある、とも書かれています。
第三者への報告と、クリティカルレビュー
結果を社外(第三者)に報告する場合は、「クリティカルレビュー」を行い、その結果をまとめた文書(レビュー声明)を、報告相手が見られるようにしておくことが望ましい、と規格には書かれています。
クリティカルレビューとは、算定の方法や結果が規格に沿っているかを、専門家に確認してもらう手続きのことです。
算定の計画を立てる段階で、レビューが必要かどうかもあわせて検討しておくことをおすすめします。
まとめ
長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。要点を整理します。
ISO 14046では、「ウォーターフットプリント」という名前は、環境への影響まで評価した結果にだけ使います。 水の量などを集計しただけの結果(インベントリ分析の結果)は、報告はできても「ウォーターフットプリント」として報告してはいけません
ISO 14046の評価には、4つのステップを必ず含めます。 「目的及び調査範囲の設定」「インベントリ分析」「インパクト評価」「結果の解釈」です。また規格は、水を使った場所や時期も、集めるデータの検討対象に挙げています
包括的な評価では、「データがない」ことは、関係する影響を評価から外す理由になりません
現場で測った数字(一次データ)は、集められる場合は集めることが望ましく、重要な工程にデータベースなどの数字(二次データ)を使うときは、その理由を説明して文書に残さなければなりません
測ったあとの使い方にはルールがあります。 結果にオフセットを含めてはならず、水だけを評価した結果をもとに「他社製品より優れている」といった比較主張をすることもできません
📖 関連記事との読み分け
• 製品ごとの水量の例 → 企業の水リスクとは?
• ISO 14046・TNFD・CDP・日本の政策動向 → 【LCAコンサルタントが解説】水リスクとは?
• 水の希少性の評価 → 【2026年最新】記録的な大雨でも水リスクは高まる?
• 原単位データベースに向き合う理由 → 【水のインベントリデータベース開発者が語る】原単位データベースに、いま向き合う理由
本記事と「【LCAコンサルタントが解説】水リスクとは?」の記事を合わせてお読みいただくと、本記事が扱う「どう測り、どう使うのか」と、同記事が扱うISO 14046・TNFD・CDP・日本の政策動向の両方をご覧いただけます。
弊社では、現在WF評価に関する新しいサービスを準備しています。
※本記事は2026年9月16日時点の情報に基づきます。
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主要出典
• ISO 14046:2014 Environmental management — Water footprint — Principles, requirements and guidelines(国際標準化機構、2014年8月)https://www.iso.org/standard/43263.html
• 環境省「ウォーターフットプリント算出事例集」(平成26年8月)https://www.env.go.jp/water/wfp/index.html
• 産業技術総合研究所 安全科学研究部門「国際的専門家との協働によるウォーターフットプリントにおける主要な方法論の特徴整理」(2025年10月)https://riss.aist.go.jp/research/20251010-3249/
• Berger et al. (2025) Ecological Indicators 174, 113458 https://doi.org/10.1016/j.ecolind.2025.113458
• 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 日本のウォーターフットプリントに関する公表ページ(2023年9月)https://riss.aist.go.jp/research/20230907-2672/
• Motoshita et al. (2023) Resources, Conservation and Recycling 196, 107055 https://doi.org/10.1016/j.resconrec.2023.107055
• Yuya Ono, Masaharu Motoshita, Norihiro Itsubo : Development of water footprint inventory database on Japanese goods and services distinguishing the types of water resources and the forms of water uses based on input-output analysis, The International Journal of Life Cycle Assessment Volume 20, Issue 10, Page 1456-1467, 2015
• 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 グローバルサプライチェーン水リスク分析シートの公表ページ(2024年10月更新)https://riss.aist.go.jp/results-and-dissemin/2944/
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