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【2026年最新】プラスチック問題の全体像と世界の動き【後編:効果検証と企業の向き合い方】

  • 15 分前
  • 読了時間: 12分

本記事は3部作の連載です

○ 第1回 前編:脱プラ問題の全体像と世界の動き ▶ こちら

○ 第2回 中編:日本の動きと代替素材のリアル ▶ こちら

● 第3回 後編:効果検証と企業の向き合い方 (このページ)

こんにちは!

LCAコンサルタントの小野あかりです。


本記事は、「脱プラスチックの現在地」シリーズの後編(最終回)にあたります。

前編で「世界の規制動向」を、中編で「日本の動きと代替素材のリアル」を整理してきました。


後編では、いよいよ多くの方が気になっているテーマ──「これだけ脱プラが叫ばれてきたのに、世界の生産量は減っていない。本当に効果はあったのか?」「『脱プラ疲れ』の正体は何なのか?」、そして「企業はこれからどう向き合うべきか?」に正面から向き合います。

 

これまでのおさらい

第1回 前編:脱プラ問題の全体像と世界の動き ▶ 読む

プラスチックをめぐる世界のスケール感、「実は2種類ある脱プラ問題」、EU・INCを中心とした世界の規制動向を整理しています。


第2回 中編:日本の動きと代替素材のリアル ▶ 読む

プラ新法、資源有効利用促進法改正、主要な代替手法(紙化・バイオマス・生分解性・リユース)、LCA視点での落とし穴を整理しています。

 


後編の目次



8.「脱プラの効果はあったのか?」

ここで、多くの方が抱える素朴な疑問に正面から向き合いましょう。

「2019年から2024年にかけて、世界のプラスチック生産量は約13%増えました。

脱プラの掛け声があれだけ盛り上がったのに、なぜ?」

──データを並べてみると、答えは「効果がない」のではなく、もっと複雑で示唆に富んだ景色が見えてきます。



 8-1.新興国の中間層拡大が需要を押し上げる

世界生産の過半をアジア太平洋地域が占めています(中国34.5%、日本2.6%、その他アジア20.1%、合計57.2%)。

一人あたりプラスチック消費量はOECD国で年間100kg超、新興国で20〜30kg程度。

新興国がOECD水準に追いつくだけで需要は2〜3倍化します。

中国・インド・東南アジアでEC(Amazon、Flipkart、Zomato/Swiggy等)が農村部にまで浸透し、新興国の宅配パッケージング需要が2019〜2024年の最大増加要因となっています。



  8-2.パッケージング需要の構造的拡大

包装用途は世界プラ需要の36.5%(2023年)を占め、最大のセクターです。

世界プラ包装市場は2023年384億ドル→2026年451億ドル→2035年665億ドル予測(CAGR 4.4%)と成長が続くと見込まれています。

食品安全、医薬品需要、少量化(個食化)、EC配送など複数の押し上げ要因が働いており、需要の縮小には時間を要する領域とされます。



  8-3.新規生産能力への投資が止まらない

価格競争・需要飽和にもかかわらず、石油・ガス会社は新規エチレンクラッカー・PET工場を建設し続けています。

化石燃料企業にとって「移行期の収益源」としてのプラスチック投資は2023〜2024年も加速しており、ケミカルリサイクル投資(SK Chemicalsの100億円規模Shuye出資など)はあるものの、バージン投資の規模感は依然として大きい状況にあります



  8-4.世界リサイクル率は約9%程度との分析も

清華大学による2025年のCommunications Earth & Environment研究では、世界全体のリサイクル率は約9%程度にとどまるとの分析が示されています(リサイクルの定義によって数値には幅があります)。

同研究によれば2010年代から大きな変化は見られず、焼却処理は34%へ増加、埋立は40%へ減少と、循環の進展は限定的とされています。

EU包装分野では38%まで上昇している一方で、グローバルに見ると進展が限定的な領域も多いとされ、新規生産の増加分がそのまま廃棄物増につながっている構造が指摘されています。



  8-5.企業のサステナビリティ目標達成の遅れ

Ellen MacArthur Foundation「Global Commitment 2025 Progress Report」によると、署名企業の多くが2025年目標の達成に苦戦している状況がうかがえます。

バージンプラ削減目標2018年比18%削減目標に対し、2024年版報告(2023年実績)では約3%削減にとどまり、最新の2025年版報告(2024年実績)でも目標達成が難しい状況が続いています。

署名企業全体としては一定のバージンプラ回避が進んだケースもある一方で、市場全体としては2018年比で増加傾向にあるとされ、一部企業ではバージンプラ使用量が増加したケースも報告されています

EMFは2030年目標(バージンプラ55%削減)にリセットして再スタートしています。



  8-6.「効果がない」のではなく「成長スピードに追いついていない」

ここまで読んでくださった方は、「結局やっても無駄なのか?」と感じるかもしれません。でも、カウンターファクチュアル(対照シナリオ)で考えると、効果は明確に存在しています


OECDの試算によれば、

・ BAU(現状継続)シナリオ:2060年に12.31億トン、2019年比約2.7倍

・ 既存政策の積み上げシナリオ:2060年に約10億トン(BAU比-19%)

・ グローバル野心シナリオ(生産規制+EPR+リサイクル投資):2060年に約8.5億トン、リサイクル率42%、海洋流出96%削減


つまり、現在の規制・企業努力には、「年成長率を抑え込む」一定の効果があった可能性が示されています

仮に何もしなければ2024年は500 Mt超になっていた可能性も指摘されています。

一方で、絶対量の減少を実現するにはまだスケールが足りないという見方が一般的で、これが2026年の現在地と言えそうです。



  9.「脱プラ疲れ」と企業・消費者ギャップ

もう一つ、近年顕在化してきた論点があります。

「脱プラ疲れ」と「企業と消費者の意識ギャップ」です。



  9-1.紙ストロー揺り戻しが象徴するもの

象徴的な出来事が2025年に起きました。

米国トランプ大統領が2025年2月10日に大統領令14208を発し、連邦政府による紙ストロー調達を停止。

日本でもマクドナルドが2025年11月からストローレスリッド(リサイクルPET100%、ストローなしで飲める飲み口付き蓋)の全国展開を進めており、容器包装類の転換による一定のバージンプラ削減を見込むとしています


注目したいのは、これは「紙ストローへの揺り戻し」ではなく、「素材論争」を超えて製品設計そのものを見直すシステム転換型のソリューションとして位置づけられている点です。背景には、ベルギー研究で多くの紙ストローからPFAS(いわゆる永遠の化学物質)が検出されたこと、米国LCA研究で紙ストローはプラの約2.1倍、PLAは約2.7倍の環境影響を示すとの結果が出たことなど、紙化の単純な優位性に疑問を投げかける研究成果があります。


ただし、この「紙ストロー揺り戻し」騒動は、前編で整理した「第1の問題」の枠内の議論である点にも目を向けたいところです。

日本のように廃棄物管理が比較的整備された国では、ストロー素材の選択が海洋プラ流出に与える影響の出方は限定的と考えられています。


世論の関心が第1の問題に集まりがちな一方で、第2の問題(タイヤ・人工芝・肥料被覆材など)への関心はまだ広がりにくい

──この構造のズレが、いまの「脱プラ疲れ」の一因にもなっているのかもしれない、と私は感じています。



  9-2.データで見る「脱プラ疲れ」の3つの正体

「脱プラ疲れ」という言葉、体感ではよく聞きますが、データで見るとその正体は「関心の消失」ではありません。


◆第1層:コスト疲れ 

Deloitte UK 2024調査では、

「コストが高すぎて続けられない」が52%(2022年)→61%(2024年)に増加。


日本でも電通12月調査で、

カーボンニュートラル必要性認識が76%→68.9%へ7.1pt減(過去最低)、

30〜40代で10pt超下落しています。


第2層:グリーンウォッシュ疲れ 

YouGov・EU Green Claims調査では、消費者の53%が「曖昧・誤解を招くグリーン主張」を確認。

・Unilever(2024年4月、バージンプラ50%→30%減目標へ後退)、

・Coca-Cola(2024年12月、リユース容器25%目標撤回)、

・Nestlé(年間28万トン非リサイクル可能プラ追加)

など、企業のコミットメント後退が続いています。


第3層:複雑さ疲れ 

紙ストローはPFAS問題で評価が揺らぎ、LCAでも「紙=プラの2.1倍の悪影響」というデータが出ました。

「正解が見えないから疲れる」

──これが2026年現在の消費者心理かもしれません。


博報堂2024年調査では、SDGs認知率が55.7%→51.7%(4pt減)、10代の過半数が「社会・環境問題に取り組むことに疲れを感じる」と回答しており、若年層にも疲労感が広がっています。



  9-3.B2B規制対応 vs B2C関心後退──広がるギャップ

ここで重要なのが、「企業のB2B規制対応は急加速しているのに、B2C消費者の関心は横ばい〜微減」というギャップです。


◆企業側ドライバ:

プラ新法、資源有効利用促進法改正、SSBJ基準、CSRD、Scope3排出への海洋プラ・MP関連項目組み込み圧力。


◆消費者側現実:

「サステナビリティに興味・関心」が4割で横ばい、SDGs認知率減少、20〜30代の27.9%が「必要性が分からない」(電通2024)。


このギャップは2026年現在、広がっている状況にあります。

企業のサステナビリティ部門の役割の重心は、消費者啓発から、「規制対応のコストを誰が・どう負担するかを設計し、経営層・営業部門にナラティブで説明し続けること」へとシフトしてきているのかもしれません。



  9-4.日本政府の現在地──「静かに、しかし確実に進んでいる」

「日本政府は脱プラに本気じゃない」という声もよく聞きますが、データを見ると景色が変わります。

第六次環境基本計画(2024年5月閣議決定)でCEを統合戦略に格上げ、資源有効利用促進法改正(2026年4月施行)で再生材利用を義務化、プラ新法の認定件数も継続的に積み上がっています。

INC交渉では「中立的仲介役」を志向した結果、2025年8月のINC-5.2は決裂しましたが、国内制度は着実に前進しています。


つまり、「目立つ脱プラ」(ストロー・レジ袋)と「制度上の脱プラ」(再生材義務化・設計認定)の間には大きなギャップがあり、企業が向き合うべきは後者だと言えます。



  9-5.これから企業はどう向き合うべきか

ここまでの整理を踏まえ、サステナビリティ担当者・経営層の方々に向けたアクションをまとめます。


◆「素材代替」から「システム転換」へ視点を広げる

UNEPの「Turning off the Tap」によると、2040年までにプラ汚染を80%削減するには、リユース30%・リサイクル20%・素材代替17%・残りは問題プラ撲滅という配分が必要です。


素材代替の貢献度は最大でも17%程度で、リデュースとリユースを組み合わせた「システム転換」が中核的な役割を担うとされています。マクドナルドのストローレスリッドは、その方向性を示す事例のひとつと言えるでしょう。


◆LCAで「自社の前提」での評価を行う

「紙化すればOK」「バイオプラなら安心」とは言い切れません。

自社製品の使い方、廃棄経路、地域の処理インフラなど、前提条件を明確にした上でLCAを実施し、定量的に判断する必要があります。


◆規制動向を継続的にウォッチする

国連プラスチック条約は遅れていますが、EU・各国の規制は前倒しで強化中です。

特にEU市場へ製品を供給する企業は、SUP指令、PPWR、REACHマイクロプラ規制への対応が必須。日本国内でも2026年4月の資源有効利用促進法改正は確実に効いてきます。


◆自主目標の「現実的な再設定」を恐れない

主要FMCGの目標後ろ倒しは「諦め」ではなく、現実を直視した目標再設定とも捉えられます。

達成不可能な目標を掲げ続けるより、達成可能な中間目標を段階的に設定し、着実に積み上げる方が、ステークホルダーへの説明責任も果たせます。



  10.まとめ

ここまで「脱プラスチックの現在地」を、前編・中編・後編の3部作にわたり、規制・代替素材・LCA・効果検証・消費者心理の各視点で整理してきました。

シリーズ全体の要点を最後にもう一度振り返ります。


・ 脱プラ問題は2種類に整理して捉えると見通しが良くなる。日本のように廃棄物処理が比較的整備された国では、第1の問題(使い捨て品)に加えて、タイヤ・人工芝・肥料被覆材などからの意図せざる流出(第2の問題)の重要性が今後さらに高まる可能性


・ 世界のプラスチック生産量は2024年に約4億3,090万トン、2019年比で約13%増。

「効果がない」のではなく「成長スピードに追いついていない」という見方もできる


・ 国連プラ条約は2026年以降に持ち越しの一方、EU・日本は規制を先行強化


・ 代替素材(紙、バイオプラ、生分解性プラ)にはLCA上のトレードオフが伴うことが多い


・ 紙袋がプラ袋に勝つには複数回利用が前提となるケースが多く、素材だけの置き換えで解決とは限らない


・ 主要FMCGの自主目標は達成が難しい状況とされ、2030〜2035年へ後ろ倒される動きも


・ 「脱プラ疲れ」の背景には、関心の消失というより、コスト・グリーンウォッシュ・複雑さといった疲弊の側面がある可能性


・ B2B規制対応とB2C関心のギャップが拡大しており、企業は規制ドライバを正面から受け止める段階に入りつつある


・ 解決には「システム転換」(リデュース・リユース中心)の視点が重要になってくる


「脱プラスチックは素材を置き換えればゴール」ではなく、ライフサイクル全体を見渡し、自社の事業構造・サプライチェーン・廃棄経路までを含めて再設計する視点が大切になってきます


──そして、日本企業にとっては「目立つ第1の問題」だけでなく「見えにくい第2の問題」にも目を向けていくことが、これからの脱プラを考える上で重要な視点になっていくのではないか、と感じています。

それが、本シリーズを通じて私がお伝えしたかったポイントです。


LCAは、そうした判断のための「ものさし」として有効に機能します。

「紙とプラ、どちらが本当に環境に良いのか」「バイオプラに切り替えるべきか」といった問いに、データに基づいて答えを出すための有力な手法のひとつだと、私たちは考えています。


私たちGreenGuardianでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにしたサポートや、現場目線でのコンサルティングを通じて、脱炭素やサステナビリティ対応をお手伝いしています。「何から手をつけたらいいか分からない」という方も大歓迎です。気軽に話せる【LCAまわりの"コンサル"】として、お困りごとを一緒に整理するところから伴走します。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ!


本シリーズの他の記事

 本記事は3部作の連載です

○ 第1回 前編:脱プラ問題の全体像と世界の動き ▶ こちら

○ 第2回 中編:日本の動きと代替素材のリアル ▶ こちら

● 第3回 後編:効果検証と企業の向き合い方 (このページ)

社員のプロフィール写真

主な参考文献・情報源

■ 効果検証・グローバル動向

・OECD「Global Plastics Outlook: Policy Scenarios to 2060」(2022)

・Tan Q. et al.(清華大学, 2025)“Complexities of the global plastics supply chain”, Communications Earth & Environment

・Ellen MacArthur Foundation「Global Commitment 2025 Progress Report」(2025年11月)

・UNEP「Turning off the Tap」(2023)

■ 紙ストロー揺り戻し・関連研究

・White House「Executive Order 14208 — Ending Procurement and Forced Use of Paper Straws」(2025年2月10日)

・日本マクドナルド「ストローレスリッド全国展開プレスリリース」(2025年10月27日)

・Gao A. & Wan Y. (2022) “Life cycle assessment of environmental impact of disposable drinking straws”, Sci Total Environ, 817:153016

・Groffen T. et al. (2023) “Assessment of PFAS in commercially available drinking straws”, Food Additives & Contaminants

■ 企業動向・消費者調査

・Unilever「How we’re aiming for greater impact with updated plastic goals」(2024年4月)

・博報堂「生活者のサステナブル購買行動調査2024」(2024年8月)


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