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IDEA原単位データベースはなぜ毎年更新されるのか?【第3部:実務運用編】

  • 5月11日
  • 読了時間: 9分

こんにちは!

LCAコンサルタントの小野あかりです。

本記事はIDEA解説シリーズ3部作の第3部、シリーズ完結編です。

前回までのおさらい(第1部・第2部)

第1部 基礎・背景編:IDEAの基本情報、単位プロセスデータと基本フローの考え方、毎年更新される4つの構造的理由を整理しました。

第2部 落とし穴・比較編:原単位の前提6つ、業界別の失敗パターン、商用版vs無料版、海外データベースとの比較を解説しました。

本記事(第3部)では、ここまでの知識を「実務でどう動くか」に落とし込みます。

EPDの有効期限5年というスパンで見たときのIDEAの位置づけ、現場で押さえるチェックポイント、お客様から実際にいただく質問への回答、そしてシリーズ全体のまとめまでをお届けします。


 本シリーズは3部構成です

第1部:基礎・背景編 → こちらから読む

  IDEAとは/LCIデータベースの基本/毎年更新される理由


第2部:落とし穴・比較編 → こちらから読む

  原単位の前提6つ/業界別失敗例/商用版vs無料版/海外DBとの比較


▶ 第3部:実務運用編(本記事)

  長期目線での位置づけ/実務チェックポイント/FAQ/まとめ

 LCA基礎の関連記事

本記事は、LCA基礎・原単位・Scope1・2・3の理解と合わせてお読みいただくと、より理解が深まります。

• LCAとは何かLCAの基本がわかる入門記事

• 原単位とは何かLCAにおける原単位の考え方

• 排出原単位の基本排出原単位とは何か

• Scopeの考え方Scope1・2・3の違いを整理



目次



10.長期目線で見るIDEAの位置づけ

少し長い目線で考えてみます。

EPDの有効期限は原則として検証合格日から5年間とされ、算定結果に5%以上の変化が生じる場合は更新が必要とされています。


5年というのは、IDEAが5回更新される期間です。

その間に:

• 国家統計が改定される

• 電力排出係数が毎年動く

• ISO規格 / GHGプロトコル / PEFが改訂される

• EU電池規制 / CBAM(炭素国境調整メカニズム)など新規制が動き出す

• SBTi基準 / SSBJ基準などの開示要請が強化される

——という変化が想定されます。


「ver.3.5で算定したCFP」と「5年後のver.4.x(仮)で算定したCFP」では、同じ製品でも結果が変わる可能性があります。

あらかじめバージョン更新のサイクルを織り込んで運用するのか、変化が起きてから対応するのかで、社内の負担や説明コストは変わってきます。


「やって終わりではなく、しっかり活用する。これは投資であり、損をさせない」——GreenGuardianが大切にしているスタンスは、こうした視点と通じるところがあります。

データベース更新を「面倒なルール変更」ではなく「精度向上の機会」として位置づけて運用していくことが、5年・10年のスパンで見たときの実務の質に効いてきます。


➡ EPD取得についてはEPD(環境製品宣言)の基本環境ラベル認証ガイド、サステナビリティ開示との関係はサステナビリティ情報開示の最新動向もあわせてご覧ください。



  11.実務で押さえておきたい5つのチェックポイント

シリーズここまでの内容を、現場で使えるチェックリストにまとめます。


【チェック1】使っている原単位の「データ年次」を必ず確認する

特に電力データや輸送データは、年次の差が結果を大きく動かします。

ver.2系(2024年7月末でサポート終了)のまま使い続けていないかを点検しましょう。


【チェック2】算定範囲(システム境界)を文書化する

Cradle-to-Gateなのか、Gate-to-Gateなのか。

誰がどこまでを担うか、どこから誰のScope3になるか

——Scope1〜3の区切りと整合させて図示しておくと、第三者検証や情報開示で説明しやすくなります。

Scopeの考え方については Scope1・2・3の違いを整理した記事 も参考にしてください。


【チェック3】二次データだけに頼らない設計をする

業界平均の二次データだけを使い続けると、サプライヤーの削減努力(省エネ設備導入や再エネ電力切替など)が一切反映されません。

環境省「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」も、寄与度の高い品目から順次1次データへ移行することを推奨しています

「まず二次データで全体像を把握(スクリーニング)し、優先順位の高い項目から1次データで精緻化していく」というハイブリッド設計が現実解です。

Scope3のデータ収集実務については Scope3データ収集の実務 でも詳しく整理しています。


【チェック4】バージョン更新時の「変更点メモ」を作る

ver.3.4からver.3.5、ver.3.5.1への更新で、自社製品のCFPがどの方向に・どれくらい動いたかを記録しておくと、取引先・検証機関・社内への説明がスムーズになります。


【チェック5】影響評価手法(IPCC AR5/AR6など)の選択を意識する

同じインベントリでも、IPCC AR5を使うかAR6を使うかで結果が変わります。

特にメタン排出が多い業種(食品・農業・廃棄物)では係数選択の影響が大きいので注意しましょう。



  12.現場でよくあるQ&A

ここからは、実際にお客様からいただく質問をベースにQ&A形式で整理します。


Q1. ver.2系でずっと算定してきたCFPを、ver.3.5に切り替えると数値が変わってしまいます。どう説明すべき?

A. 「データベース更新による正常な変化」として、変更点を明示することが推奨されます。具体的には、

(1) 使用したIDEAバージョン、

(2) 主な変更項目(電力係数、生物由来炭素の扱い、LULUC計算など)、

(3) 自社製品への影響度を簡潔にまとめた説明書

を添付するのが有効です。

SuMPO EPD GPI v.2.0でも、データベース変更による数値変動は容認されています。


Q2. 環境省の無料DB(排出原単位データベース)だけでScope3算定はできますか?

A. スクリーニングと全体把握には十分ですが、製品単位の精密算定や第三者検証には商用版IDEAが推奨されます

環境省DBは産業連関表ベース(金額按分)の項目が多く、サプライヤーの削減努力を反映しにくいという制約があります。

寄与度の高い品目だけ商用版IDEAや1次データで精緻化する「ハイブリッド設計」が現実解です。

Scope3全体の整理は Scope3排出量算定の基礎、最新動向は Scope3最新動向2024 もご覧ください。


Q3. IDEAのライセンス料はどれくらい?1人で使えばいい?

A. ライセンス体系は標準ライセンスとサプライチェーンライセンスを中心に、利用範囲・人数・組織種別(一般企業/中小企業/アカデミー等)で価格が変わります。

SuMPO公式サイトやAIST Solutions公式サイトで最新の価格表が確認できます。

社内でLCAを継続運用するなら、属人化を避けるためにも複数人でアクセスできる体制を組むことをおすすめします。


Q4. ecoinventとIDEA、両方契約すべきですか?

A. 国内のみが事業範囲ならIDEAだけで十分なケースが多いですが、海外拠点・輸入原料が多い企業はecoinventの併用を検討すべきです

EU電池規制やPEFスキームに対応する場合、欧州系データベースとの整合性が問われる場面が出てきます。


Q5. ver.3.5.1が出たばかりですが、ver.3.5で算定したCFPは無効ですか?

A. 無効ではありませんが、修正内容(バター・粗糖等のCO2吸収量削除、LULUC計算修正)が自社製品に該当する場合は再算定が推奨されます

SuMPOの公式告知(2025年6月)で修正対象が明示されているので、まず該当の有無を確認してください。

詳細は IDEAよくある質問 や IDEA ver.3.5の主な変更点 もご参照ください。



  13.シリーズ全体のまとめ

毎年のIDEA更新を、ルール変更として受け流すのか、精度向上の機会として活用するのか——その捉え方によって、LCA実務の運用品質は変わってきます。シリーズ全体を通したポイントを整理します。


① IDEAは産総研(AIST)のIDEAラボが開発する日本最大級のLCIデータベース

ver.3.5(2025年4月)/ver.3.5.1(2025年6月)で約5,600件以上の単位プロセスデータと18の環境影響領域に対応。SuMPOはじめ複数の代理店を経由してライセンスが提供されています。(第1部)


② 単位プロセスデータと基本フローはLCIの基本概念

単位プロセスは工程ごとの入出力レシピ、基本フローは環境とやり取りする物質・エネルギー(ISO 14040定義)。両方を理解することで原単位の前提が見えてきます。(第1部)


③ 毎年更新の理由は構造的

(1)国家統計の改定、

(2)電力排出係数の年次更新、

(3)ISO・GHGプロトコル・PEF等の国際規格対応、

(4)技術進歩・産業構造変化

——どれも避けられない外部要因です。(第1部)


④ 無料版・簡易版では6つの前提が見落とされがち

データ代表年・地理範囲・システム境界・配分・影響評価手法・生物由来炭素。

これらは年次更新の度に変わり得る項目です。(第2部)


⑤ SuMPO EPD取得には原則IDEAをデフォルト使用

ver.3.5.1ではISO 14067整合のためのバター等CO2吸収量削除、LULUCダブルカウント修正も実施されました。(第2部)


⑥ 国際DBも毎年更新が標準

ecoinventは年1回、約26,000件以上のデータを継続更新。

EUのPEF・EF Database、EU電池規制対応も含めて、世界標準に整合させ続けることが日本企業の競争力に直結します。(第2部)


⑦ 5年・10年スパンで考える

EPDの有効期限5年、データベースもその間に5回更新されます。

バージョン更新を運用に織り込んでおくと、変化が起きたときの社内負担や説明コストを抑えやすくなります。(第3部)


⑧ 実務の5つのチェックポイント

データ年次・システム境界文書化・1次データへの段階移行・変更点メモ・影響評価手法選択——この5点を運用に組み込むと、第三者検証・取引先説明がスムーズになります。(第3部)


私たちGreenGuardianでは、LCA(ライフサイクルアセスメント)をベースにしたサポートや、現場目線でのコンサルティングを通じて、脱炭素やサステナビリティ対応をお手伝いしています。「何から手をつけたらいいか分からない」という方も大歓迎です。気軽に話せる【LCAまわりの"コンサル"】として、お困りごとを一緒に整理するところから伴走します。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ!


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主な参考文献・情報源

【国内行政機関】

•産業技術総合研究所(産総研/AIST)「AIST-IDEA ver.3.5への更新について」(2025年5月) https://www.aist.go.jp/aist_j/news/au20250520.html

•産総研 IDEAラボ https://riss.aist.go.jp/idealab/

【業界団体・運営機関】

•一般社団法人 サステナブル経営推進機構(SuMPO)「LCIデータベースIDEA」 https://sumpo.or.jp/consulting/lca/idea/

•SuMPO EPD「基本プログラム要件 GPI v.2.0」(2024年6月) https://ecoleaf-label.jp/wp-content/uploads/2024/06/SuMPO-EPD_GPI_v.2.0.pdf

•株式会社AIST Solutions「AIST-IDEA サービス案内」 https://www.aist-solutions.co.jp/service/aist_idea/aist_idea.html

【国際機関・規格】

•ISO「ISO 14044:2006 Environmental management — Life cycle assessment」 https://www.iso.org/standard/38498.html

【学術文献・国際DB】

ecoinvent協会「ecoinvent Database Releases」 https://support.ecoinvent.org/releases-overview


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